GINZA CONNECTIVE (高嶋ちさ子対談シリーズ)

原 信司×高嶋 ちさ子

GINZA CONNECTIVE VOL.4

原 信司×高嶋 ちさ子

2012.01.01

バイオリニストの高嶋ちさ子さんと、銀座人たちの対談シリーズ。高嶋さんにとって銀座は、仕事でもプライベートでも思い入れのある街。そんな高嶋さんがゲストの方に、銀座のあれこれをディープに聞いていただきます。今回のゲストは、和装履物屋「銀座与板屋」の5代目、老舗の看板を背負う原信司さんです。

〝粋〟をどうやって表現するか、それが自分の役割です。

高嶋さん
ご自身でも花緒をすげたりされるんですか?
原さん 
やりますよ。まだまだ修行の身ではありますが、10年ほどやっておりますので。
高嶋さん
もともと手先が器用だったんですか?
原さん 
ありがたいことにそうなんです。小さい頃から何か作ったり、細かな作業をしたりするのは得意でした。
高嶋さん
5代目になられて、何か新しいものを作ろうという試みはあるんですか?
原さん 
時代に合わせたマイナーチェンジは大切だと思いますが、それよりも伝統を守りたいという意識の方が強いですね。代々〝粋〟という言葉をキーワードとして大切にしているんですが、粋の感じ方も、人によって、時代によっていろいろだと思いますが、それを一足の草履の中で、どうやって自分が表現するか。それが役割だと思っています。
高嶋さん
こだわりを教えて下さい。
原さん 
花緒のすげ方が一番のこだわりですね。曲線美を描くようにすげるんです。足のカーブに沿うようにひねりながら花緒をすげることで、足が痛くならない草履になるんです。花緒のすげ方をとっても、お店でまったく違うので、履き心地が全然違ってくるんですよ。
高嶋さん
足に合わないものだと、すぐに水ぶくれができちゃいますもんね。お客様の足を見ただけでどれがぴったりなのかわかるんですか?
原さん 
そうですね。意外と自分の足を勘違いされている方もいらっしゃるんですが、目の前で調節することで納得して頂けると思います。

銀座らしいあったかさを忘れないでほしい。

高嶋さん
銀座の一等地で商売を続けられるのは、大変だと思うんですが……。
原さん 
周りはずいぶん変わりました。逆に古い店が目立つようになってきましたね。
高嶋さん
そうですよね。ジミーチュウやトリーバーチやら、高級ブランド店が軒を並べているし、かなりこの辺は洋風ですよね。
原さん 
たまに、「銀座にこんな店あるんですか?」って驚かれるんですけど、うちの方が先にあったんですからね(笑)。
高嶋さん
面白いですね(笑)。この通りはとくに銀座の中でも華やかですよね。
原さん 
そうなんです。今考えるとこの地に店を構えたのは先見の明がありますよね。
私も就職して一度はこの街を離れたんですが、そのことでより銀座の良さを体感できましたね。戻ってきたとき、本当にほっとしましたから。空気が違うというか、歩いているだけで心が落ち着くんです。
高嶋さん
今後、銀座はどのようにあってほしいですか?
原さん 
外から見る銀座って、海外ブランドだったり夜の高級クラブだったり、敷居が高いというイメージがあるかもしれませんが、一歩中に入るととても温かみがあって、人情の街だと思っています。もちろん新陳代謝をしていくべきだし、新しいものが銀座らしく入ってくれるのは歓迎ですが、あったかさを忘れないでほしいですね。

次回のゲストは……?

高嶋さん
次回のゲストをご紹介いただけますか?
原さん 
日本のセレクトショップの草分け的存在である、サンモトヤマの茂登山会長です。Br />グッチやエルメスなどを日本に初めて紹介された方で、興味深いお話が伺えると思います。

高嶋 ちさ子

ヴァイオリニスト。6歳からヴァイオリンを始め、海外で活躍後、日本に本拠地を移し、全国各地でコンサートを行っている。現在は、演奏活動を中心としながらも、テレビやラジオ番組の出演などでそのキャラクターが評価され、活動の場はさらに広がりを見せている。

高嶋ちさ子オフィシャルウェブサイト

原 信司

1972年、銀座生まれ、銀座育ちの生粋の銀座人。
明治10年創業の老舗和装履物屋「銀座与板屋」の5代目であり、代表取締役社長を務める。
お客様に「履きよい」と言われる草履をすげることが一番の喜びだとか。

「銀座与板屋」ウェブサイト

取材・文: 岡井美絹子 取材場所:銀座与板屋

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