GINZA CONNECTIVE (高嶋ちさ子対談シリーズ)

原田 裕介×高嶋 ちさ子

GINZA CONNECTIVE VOL.16

原田 裕介×高嶋 ちさ子

2013.01.07

ヴァイオリニストの高嶋ちさ子さんと、銀座人たちの対談シリーズ。高嶋さんにとって銀座は、仕事でもプライベートでも思い入れのある街。そんな高嶋さんに、ゲストの方をお迎えして銀座のあれこれをディープに聞いていただきます。今回のゲストは、銀座を代表する画廊として多くの人々に愛されている「相模屋美術店」の代表取締役社長、原田裕介さんです。

作家の名にとらわれず、一級品かどうかを見極める。

高嶋さん
相模屋美術店さんは、いつからお店を始められたんですか。
原田さん
創業1947年ですから、2012年にちょうど65周年を迎えました。祖父が開業したので、現在私が3代目です。
高嶋さん
どんな美術品を扱っているのでしょう?
原田さん
主に明治時代以降の近現代絵画です。それと、今はだいぶ縮小しましたが、宝飾品も扱っています。祖父はとにかく綺麗なものが好きな人でしたから。
高嶋さん
美術品は、原田さんご自身が、オークションで買い付けてこられるんですよね。
原田さん
そうですね。主に業者同士のオークションで、競り合って手に入れます。ほかに、個人所有の美術品に値段をつけて買い取ることもありますし、現代美術の作家さんに制作依頼をして、画料をお支払して買い取るというケースもありますよ。
高嶋さん
そこに修復も加わると、まさに楽器屋さんと一緒ですね!私は美術の世界には詳しくないですが、流通の仕方が、とてもよく似ています。買い付けの際に心がけていることなどはありますか。
原田さん
どんな商品を置くかは、店によって違いますが、うちは、綺麗なもの、きちんとした一級品しか扱わないと決めています。ひとりの作家さんにもいろんな作品がありますが、たとえ名の知れている作家さんでも、出来の良いと思ったものしか扱いません。
高嶋さん
さすが! 名前では買わないということですね。楽器業界は腐ってもストラディバリウスですけど、それとは違いますね(笑)。美術品を観る目が大事ということでしょうか。
原田さん
そうですね。ブランドにとらわれないというのがとても大事です。だから、何より、自分の感覚、直観を大事にしています。そういう美術品がやはりお客さまの心にも届きますから。

落ち着いた雰囲気の画廊内

作家と付き合いながら共に成長していきたい。

高嶋さん
先ほど作家さんに制作依頼をすることもあるとおっしゃっていましたが、作家さんとのお付き合いもあるんですね。
原田さん
前田青邨先生、平山郁夫先生など、祖父も父も、著名な作家さんたちとお付き合いをしていました。これも、相模屋美術店の特徴かもしれません。実際、作家さんと直接付き合っている画廊は少ないと思うんです。でも敢えて、うちがそこにこだわるのは、ただ絵を売るというだけではなく、魅力を伝えるのに大切なことだと考えているからです。
高嶋さん
作家さんと接するといろんな発見がありそうですね。
原田さん
はい、その方の個性や、どんなストーリーをもって描いたかなど、作品の裏にある背景を知ることができます。そうすることで、作品を気に入ってくださったお客様に、文献からでは知りえない生き生きとした魅力を伝えることができるんです。
高嶋さん
裏側にあるストーリーを聞くと、作品がもっと身近に感じられそうですね。超一流どころだけでなく、若手の作家さんを育てることもあるのですか。
原田さん
今までも、若い作家さんとお付き合いはありました。今後も積極的に育てていきたいと思っています。ここでは、道行く人の目に触れる1階に若い作家の作品をそろえているんですよ。
高嶋さん
作品を観てもらう場になりますね。
原田さん
そうなんです。みなさんに観てもらわないことには、評価されませんから。それと同時に相模屋が認めた作家だからいい、という評価が受けられるよう私どもも精進していきたいです。若手作家さんをマーケットに乗せるお手伝いをしながら、共に成長していけたらいいですね。

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