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柴田 光治×高嶋 ちさ子

GINZA CONNECTIVE VOL.20

柴田 光治×高嶋 ちさ子

2013.05.01

ヴァイオリニストの高嶋ちさ子さんと、銀座人たちの対談シリーズ。高嶋さんにとって銀座は、仕事でもプライベートでも思い入れのある街。そんな高嶋さんに、ゲストの方をお迎えして銀座のあれこれをディープに聞いていただきます。今回のゲストは、昭和初期から和装小物屋を続ける「銀座かなめ屋」の三代目店主、柴田光治さんです。

洗練されたべっ甲の小物といえば、江戸べっ甲ですね。

高嶋さん
ところで、べっ甲を作る技術はいつから始まったのでしょうか?
柴田さん
はっきりとした文献が残っているわけではないのですが、元々は6世紀ごろに中国で生み出された技術だったと言われています。その頃(飛鳥・奈良時代ごろ)日本にも、べっ甲を使用した琵琶や杖などの「工芸品」が日本に伝わって来たとされ、東大寺正倉院の宝物庫に納められています。そして、べっ甲の「技術」が日本に伝わって来たのはそれから暫くの後、江戸時代になってからと言われています。徳川幕府の鎖国時代、中国からポルトガルへと伝わったその技術が、当時海外との貿易の窓口であった長崎にポルトガル人が来航したことにより、伝わったと言われています。そういう意味で、長崎はべっ甲の発祥の地と言われています。その後、日本人の国民性でしょうか、元々の手先の器用さも相まって、べっ甲の技術も次第に洗練され、美術的な置物や洋装のアクセサリーなど作り出されて行きました。長崎に伝わったそのべっ甲細工の技術は、その後さらに精度を高めながら、次第に東へと伝わり、江戸の大奥文化でべっ甲を使用した髪飾りなどの加工技術が開花したと言われています。ですから、べっ甲で作られたかんざしや帯留といった和装品といえば江戸(東京)なんです。
高嶋さん
わりと古くないんですね。しかも、べっ甲ってなんとなく京都のイメージがあったので意外でした。
柴田さん
そうなんです。「べっ甲のかんざしや小物は京都で買った方がいいのかしら?」と、よくお客様にも聞かれるんですが、今お話した通り、かんざしや帯留をはじめとする「和」に関連したべっ甲製品が、今でも一番多く作られているのは、東京なんですよ。勿論、他の地域(京都、大阪、長崎など)でも作られていますが、こと、和装品においては、江戸時代から今日までも東京が一番なんです。
高嶋さん
それで、〝江戸べっ甲〟と呼ばれているんですね。
柴田さん
ええ。その証拠に、東京都からも「東京都の伝統工芸品」ということで、ちゃんと認定されているんですよ。
高嶋さん
べっ甲の材料となるカメはどんな種類が使われているんでしょうか?
柴田さん
タイマイという海ガメの一種です。今はどうか分かりませんが、昔はキューバで食用とされていたそうです。べっ甲は言わば、その後に残る抜け殻でした。
高嶋さん
でも、タイマイってワシントン条約で輸入できないんじゃないですか?
柴田さん
そうなんです。なので、今は輸入禁止前(日本では1992年に輸入禁止)に仕入れた材料を少しずつ加工しています。このまま輸入が再開されなければ、いつかは材料が無くなってしまうことが危惧されています。しかし最近では、材料が底をつく前に、べっ甲職人の方が先に居なくなってしまうのではないかとも心配されています。いずれにせよ、そうなったら江戸時代から今日まで代々大切に受け継がれてきたこのかけがえのない貴重な日本の伝統技術、文化ももう終わりです。
高嶋さん
今、お取引きがある職人さんって何人くらいいらっしゃるのですか?
柴田さん
かなめ屋の専属というわけではありませんが、携わっている方々は20~30人くらいかなぁ。そしてその多くが高齢です。
高嶋さん
原料の確保も人材の育成も難しいという状況なんですね。でも、こんなに素晴らしい日本文化は、やはり後世に伝えていってほしいです。

銀座にお越し頂いたお客様には、感動を覚えてお帰り頂きたいですね。

高嶋さん
これからの銀座はどのようにあってほしいですか?
柴田さん
まず銀座は日本一の商店街だと言っても過言ではないでしょう。また今後もそうであって欲しいです。それと同時に、安心、安全な街であって欲しい。実際、夜でもお子様連れでお歩きになられている方をよく見掛けます。他の繁華街ではあまり見られない光景だと思います。それだけ、銀座の地域の人たちが目を光らせているんですよね。
高嶋さん
たしかにそうですね。
柴田さん
そしてやはり、銀座にお越し頂いたお客様には、感動を覚えてお帰り頂きたいですね。食べ物でもお買い物でも、「さすが、銀座ね」と喜んでいただけるような、期待を裏切らない街でいて欲しい。そのためには、私たち銀座で商売をさせて頂いている個々のお店、人たちが、お客様に感動して頂ける商品やサービスを、常に考え、提供していかなければならないと思っています。私はまだまだ、今日の銀座を築き上げてこられた銀座の諸先輩方の足元には遠く及びもしませんが、それでも毎日、自分が出来る事をコツコツと、日々精進していきたいと思います。

高嶋 ちさ子

ヴァイオリニスト。6歳からヴァイオリンを始め、海外で活躍後、日本に本拠地を移し、全国各地でコンサートを行っている。現在は、演奏活動を中心としながらも、テレビやラジオ番組の出演などでそのキャラクターが評価され、活動の場はさらに広がりを見せている。

高嶋ちさ子オフィシャルウェブサイト

柴田 光治

和装小物屋「銀座かなめ屋」の代表取締役。大学卒業後、アメリカに留学。帰国後、一般企業に勤めたあと、お店の三代目に就任。店舗での販売のみならず、SNSやブログなどを通し、和装小物の魅力を日々発信している。

「銀座かなめ屋」ウェブサイト

取材・文:岡井美絹子  取材場所:銀座かなめ屋

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