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落語家 柳家さん生さん

シリーズ銀座×人 VOL.1

落語家 柳家さん生さん

2011.08.31

銀座と縁のあるゲストをお招きし、外から見た銀座をテーマに、その魅力やこれからの銀座を自由に語っていただくこのコーナー。第一回目の銀座×人は、来年真打20周年を迎える、落語家の柳家さん生さんです。
三匹の愛猫と料理上手な奥さんとのスローライフを送っていらっしゃるさん生師匠は、仕事でもプライベートでもよく銀座を訪れているそう。粋な銀座の過ごし方や、独自の切り口で語られた銀座論は、長年この街を見続けてきたからこそ見えた銀座への愛情が伝わってきました。

子供が憧れて、大人が似合うそんな街。
いつまでも媚びない銀座であってほしいですね。

語りだけで情景が浮かぶ落語の世界がすげえなあって。

元々は役者になりたかったんですよ。それがね、頭をぶん殴られて、落語ってすごいんだよって言われたような衝撃を受けた公演に出合ってしまったんですよ。昭和50年5月24日に国立小劇場で観た、今は亡き10代目金原亭馬生師匠の「お初徳兵衛」っていう人情話。これがねぇ~、すごかったですね。田舎から東京に出て来てまだ2か月くらいだったから、屋形船も隅田なんて見たことないのに、目の前に情景が浮かぶんですよ。そこでお初と徳兵衛が抱き合ってる姿が見えるんです。でもね、金屏風の前には師匠一人しか座ってないんですね。すげえなあと思って。

それからはどうしようもないですね~。
新宿の末広亭に週のうち3日は通って、弁当持って行って昼の12時から9時までずっと寄席を観賞する生活。
そのうちだんだん大学に行かなくなってしまうんですけどね……(笑)。

銀座はちょっと憧れた場所でもあるんです。

落語に関する銀座の思い出といえば、歩行者天国で落語をやったことですねえ。大学で落語研究会にいたんですが、バカなことをやるのが好きな先輩たちで、着物着て「小話やりまーす!」って。当時はイヤだったけど、今考えると楽しかったですね。

それから噺家になって35年、来年で真打20周年になります。面白いことやろうよってことで、去年から「さん生3年プロジェクト」という公演をやっているんですが、場所にもこだわりたくて見つけたのが『銀座博品館』。
ここはその昔、春風亭小朝師匠がひと月公演をやった所で、ちょっと憧れた場所でもあってね。いま稽古の最中ですよ。ほかにも、ほぼ月1で銀座の『玄海鮨』さんで、寄席と寿司がセットになったディナーショーみたいなものをやってるんですが、普段からお茶飲んだり、打ち合わせなんかでも銀座によく行くんですよ。

銀座はほどよい距離感を持った大人の街だなあと思います。

やっぱり大人になると銀座はいいねぇ~。ほどよい距離感を持った大人の街だなあと。自分の中で銀座がしっくりくるようになったのは、30代になってからですね。新宿や渋谷なんかとは違って、にぎわいはあるけどワサワサした感がない。ふっと路地裏に入ると昔からあったんだろうなあって感じのいいお店があって面白いんですよね。

もともと私はビートルズが好きでね、お気に入りはジョン・レノンも来た『樹の花』という喫茶店。本を持って2~3時間います。チェーン店じゃなくて喫茶店がいいんですよね。あとは、帽子が好きなので『銀座トラヤ帽子店』さんや、お香の『香十』さんにもよく行きますね。落語家が着物で歩くっていうのにも憧れていてね、真打になってからは普段から着物の生活をしてますね。もちろん、『トラヤ』さんの帽子をかぶってね。

最近はデジカメのモノクロ撮りにハマっています。だから、着物姿でデジカメを首から下げて歩いてますね。白黒の世界って落語の世界と通じるものがあって、想像しなきゃなんないでしょ。かえって色が見えることがあるんですよ。

なるべく不便で媚びない銀座であってほしい。

最近は若者に媚びている店や街が増えているでしょ? 味付けも暮らしもテレビも子供中心。「大人になったら行ってやる」、そういう子供に憧れを与えるものが今ないんですよね。でも銀座は適度に距離感を持っているところがあるんです。私が好きな『梅林』のカツ丼なんかは、味付けも甘じょっぱくて濃くて、今の子たちに媚びてない味がいいんですよね。世間の波に追っかけるように乗るんじゃなくて、クオリティの高いところを保っていれば、必ずいつかその波とぶつかるところがあると思うんですよ。

そして銀座はなるべく不便でいてほしい。不便さの良さってあると思うからね。鉛筆は1丁目のあそこ、筆箱は6丁目のあそこっていう風にすれば、本当にいい品物が手に入るでしょ。何でも便利なのも不便かなと思うんです。

柳家さん生

昭和32年、富山県生まれ。昭和52年、柳家小さん門下、柳家小満んに入門。前座名小勇。
平成5年9月、真打昇進。小勇改めさん生。
寄席定石に出演はもちろんのこと、都内各所にて勉強会、独演会を精力的におこなうなど積極的に活動中。
9月2日から4日までの4日間、銀座博品館にて「広重三本勝負」を開催。
古典、新作、ゲストも招いたかつてない公演は必見!

柳家さん生公式サイト・さん生さんちの台所

取材・文:岡井美絹子

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