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写真家 篠山紀信

シリーズ銀座×人 VOL.3

写真家 篠山紀信

2011.11.11

銀座と縁のあるゲストをお招きし、外から見た銀座をテーマに、その魅力やこれからの銀座を自由に語っていただくこのコーナー。第三回目の銀座×人は、日本を代表する写真家、篠山紀信さん。キャリアはすでに40年以上。いまなお第一線で活躍し、巨匠、大御所であるところは周知の事実ですが、素顔は気さくでサービス精神旺盛な人柄。冗談を飛ばし、茶目っ気たっぷり。とってもチャーミングなお方でした。そんな篠山さんに、銀座で現在行われている写真展の撮影裏話や銀座の思い出を語っていただきました。

銀座で働く人たちの幸せそうな表情がある限り、ここは大丈夫だって思う。変化もあるけど変わらない部分もある、そんな銀座はやっぱり銀座のままでいい。

もともと写真にすごく興味があったわけじゃないんです。

写真家としての道を歩み始めたきっかけは、はじめに受験した大学に落ちたんだけど、浪人するのもイヤで、まだ募集がかかっていた日本大学の芸術学部に出願して受かったから。もともと写真にすごく興味があったわけじゃないんですよ。でも、これから写真っていいんじゃないかなとなんとなく思って、職業として写真を選んだんです。それで、大学では写真科を専攻していたんですけどね、全然写真のことなんて教えてくれないわけなんです。一番頭にきたのは、体育の時間。跳び箱を飛べって言われちゃうんだから(笑)。突き指したら、どの指でシャッター押せばいいのって話でしょ(笑)。これじゃあダメだと思って、大学と並行して夜に2年間写真の専門学校にも通って、実践的な技術を磨いたんです。専門学校を卒業する頃にちょうど、銀座にある『ライトパブリシテイ』というとても有名な制作会社から、カメラマンの募集がかかっていたんです。受けろって言われて受けたら、たまたま受かっちゃって。ここに6年間いて、技術を勉強してその後フリーになるわけなんですが、人間から自動車から建築、なんでも撮りましたね。たまに、落語家だったって言われるんですけどガセですよ(笑)!

銀座は僕にとって青春の地。男は銀座で飲まなきゃって思ってた。

当時は、今はもうなくなっちゃったんだけど『いわしや』にはよく行っていましたね。その頃は学生だったしお金もないから、クラブみたいな高い所もいけないわけだけど、トリスバーなんかもあってよく飲んでいましたね。
仕事が終わるとみんなでそこに行って、写真の話をしたりなんかして。僕の青春の地ですね、銀座は。
この本(篠山氏写真集「GINZA しあわせ」講談社刊)にも載っている『クラブグレ』は、最初編集者とかに連れて行かれてね、当時はピアノがあったんだけど、その横にウエィティング席みたいなのがあって、僕は座って待たされるわけ。で、夜の12時になったら電気が暗くなって蛍の光が流れて、次に明るくなると、やっと女の子の席に行かせてくれるの。その前は学割だから行かせてくれないの(笑)。だからそれからは12時直前に行くようにして、待ち時間を短縮したり(笑)。その頃のグレって、小説家の安岡 章太郎さんとか、吉行 淳之介さんとか、文化人が多かったなあ。安岡さんはピアノでシャンソンなんか歌ったりしててカッコいいの。やっぱり男は銀座で飲まなきゃって、思うよね。ほんとは僕、新宿で飲んでいたんだけど(笑)。全国に銀座はたくさんあるけど、東京の銀座は本家だからね。やっぱり本家が一番色気があるでしょ。

品があってあったかみもある、銀座の人たちは幸せそうな表情をするなって。

いま東京画廊+BTAPでやっている「GINZA しあわせ」って展覧会は、銀座の商店主たちを撮ったもの。僕が銀座で何か撮るなら、人間的なものを撮りたいなって思ったんです。銀座にずっと住んでいる、老舗と呼ばれるお店の人たちって面白いんじゃないかと。銀座も新陳代謝を繰り返してきてどんどん変わってきているけど、それぞれの時代にそれぞれの名作があるように、今の時代にずっと銀座でやってきた人に会って撮りたいなと思って。で、実際会ってみたら、みんな共通点がある。品があるんだよね~。佇まいがよくて、あったかみがあって……。僕は第一印象で撮るのが好きだから、撮影するにあたって、ロケハンも指示出しも何もしてないんだよ。いきなり行ってパッと撮ってこの笑顔。幸せそうな表情なの。だから、タイトルも「しあわせ」にしたの。はじめは「銀座の柳」ってタイトルにしようかと思っていたんだけどね。「気に入らぬ風もあろうに柳かな」って歌があるけど、銀座の人たちも柳のように、気に入らなくても風に吹かれるがまま銀座にいたのかなって思ったんだけど、違うって気づいた。これは〝幸せ〟だって。お客さんに元気を与えよう、幸せになろうって心意気を感じた。でもね、あまりにも撮るのが早いから、結構不満持っている人がいたみたいで(笑)。店主の人たちからすると、もう1週間も前からどの服着ようかとか、どんなポーズとろうかって考えてたのに、僕は来たらささっと撮って、パーッと帰っちゃうからね(笑)。でもこのやり方でよかった。初めて会う人ばかりだったけど、みんな本当に素敵だった。だから迷いがなくて、とっても撮りやすかったんです。

銀座は銀座でいいじゃんって思う。

銀座は確かに変わってきているけど、清潔感があって格調も高くて、歩いている人もみんなおしゃれ。やっぱりほかの街とは違う、特別な雰囲気を持ってますよね。よく銀座の人たちはどうしようって言うけど、銀座は銀座でいいじゃんって思う。ここは忘れてほしくないなあと思う。昔は昔、今は今って思っているから。僕は過去のことは振り返らない、明日を見ているタイプだからね。でも、持続していくことだけでも大変ですからね。9割ぐらい変えて1割守ることがコツかな。そしてこの1割がほんとに大事。ここがちゃんとした密度がないとダメ。
ちなみに僕の1割は、秘密だけどね(笑)。

篠山 紀信

写真家。日本大学芸術学部、東京綜合写真専門学校卒。広告制作会社「ライトパブリシテイ」を経て、1968年よりフリーに。第一回APA賞ほか受賞多数。時代を象徴する人物、事象、都市をはじめ、「激写」や「シノラマ」など新しい表現方法と新技術で常にその時代を切り撮り続けている。 近年はデジタルカメラによる写真と映像の表現「digi+KISHIN」を、ウェブサイト「shinoyama.net」発表し話題に。

篠山紀信公式サイト SHINOYAMAKISHIN.JP
篠山紀信写真展「GINZA しあわせ」(東京画廊+BTAP Webサイト)

取材・文:岡井美絹子  取材場所:KISHIN SHINOYAMA STUDIO

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