CSR・CSV

伊東屋

Ginza×CSR・CSV Vol.32 伊東屋

“文房具”という体験を通じて人の暮らしと豊かさに寄り添う

2019.03.15

「銀座×CSR・CSV」第32回で紹介させていただくのは、文房具専門店として知られる伊東屋です。1904(明治37)年の創業以来、文房具の販売を通して文化の担い手であり続けてきた伊東屋。銀座本店は2015年にG.Itoyaとして新たに生まれ変わり、これまでの「文房具店」のイメージを超えた新たな価値を発信し続けています。そこにはどんな想いがあるのでしょうか。株式会社伊東屋 銀座本店 総支配人の宮坂宏幸さんに伺いました。

“買う”場所から“過ごす”場所へ G.Itoyaが展開する新しい“文房具”の世界

  • ─ 1904(明治37)年の創業以来、銀座の地で文房具の販売を通じて日本の文化の発展に寄与されていらっしゃいます。
  • 今年で創業115年目を迎えますが、時代の変化とともに文房具の位置づけも変わってきました。購買動機も従来の「日常生活に必要なもの」という点から「好みによって選ばれるもの」に変わってきています。文房具の基本は「書くもの」と「書かれるもの」であると考えています。「どこで買って、何を使うか、どういう買い方をするか」ということに関心が広がってきました。文房具そのものはインターネットでも買える時代ですが、そういった中で銀座の伊東屋で買っていただく意義とは何か、伊東屋らしさや銀座らしさということを常に意識しています。
  • ─ 2015年6月にリニューアルした銀座本店は、伊東屋らしさ・銀座らしさの象徴と言えそうですね。
  • リニューアルする際に、従来の“モノを買う店舗”から、様々な体験のできる“過ごせる店舗”へ、ゆっくりと快適に過ごしていただけるフロアづくりを目指しました。

    1階ではオリジナルレシピのレモネードを販売し、こちらを飲みながらお買い物を楽しんでいただけるようにしています。日本では店内での飲食は制限されていることが一般的ですが、海外では以前からそういったスタイルがあり、銀座本店でも取り入れることにしました。取り入れるにあたっては商品や店内が汚れてしまうのではという心配がありましたが、蓋を開けてみると、そんなことは全くなく、お客様に楽しんでいただいております。
1階のドリンク販売コーナー

1階のドリンク販売コーナー

  • 2階には手紙を書くことができるスペースがあり、万年筆などの筆記具の貸し出しも行っています。万年筆を使ったことがない方には手にしていただくきっかけになりますし、店内には本物の郵便ポストがあり、書いていただいた手紙を投函することができます。当社のオリジナル切手も販売しています。手紙は従来、自分の部屋やオフィスで書いたりすることが多かったと思いますが、手紙を書くために訪れたいと思っていただけるような場所になればと考えています。
2階の手紙スペース

2階の手紙スペース

  • 5階にはNomad’s Nookという、ノマドワーカーのための空間を設置しました。これまで文房具は書斎や仕事場など屋内を中心に使用されるものでしたが、今の時代は働き方が変わってきていますし、タブレットを持って外で仕事をする人も増えていますので、移動しながら出先で使用されることも多くなってきました。そこでこのフロアには、身につけて持ち歩くことのできる素敵な仕事道具を集めました。リュックやレインシューズも取り扱っています。11階には野菜工場があって、水耕栽培で育てた野菜を12階のカフェで提供しています。お買い物の合間に、お茶やお食事を召し上がって、ひと息ついていただける場所となっております。

“文房具”と人の関係をよりクリエイティブに

  • ─ これまでの「文房具店」のイメージをはるかに超えた空間になっているのですね。
  • お店を歩いているだけで、いいひらめきが起きるような場所でありたいと常にイメージしているます。

    4年前にこのビルをリニューアルしましたが、その3年ほど前から、ここをどんな場所にしていくかということを社内で話し合ってきました。リニューアルオープンした年は、私たち自身もそうですが、お客様もあまりの変わりように驚かれました。その後1年かけて、お客様の声や自分たちで気づいたことを反映して調整を行い、現在の姿になりました。ここまで思い切った建て替えにするのは大きな英断があってこそですが、これがなければ新しい発想が生まれてこなかっただろうと思っております。守っていくものと、新しくチャレンジしていくことと、両方が大事だということですね。
  • ─ さまざまなイベントも展開されていらっしゃいますね。
  • 地下1階にホールを、10階にはビジネスラウンジを開設し、空間事業をスタートしました。2018年秋には「INK. Ink. ink! 〜インク沼へようこそ〜」というイベントを開催しました。「インク沼にはまる」とは、「インクに夢中になる」ということなのですが、それくらいインクとは興味を引きつけるものと言えます。1000種類のインクを集めて全て試し書き・購入ができるようにしたところ、大変ご好評をいただきました。昔は万年筆を持っているからインクを買うというのが一般的でしたが、今は逆に、インクが好きだから万年筆が欲しいとか、オリジナルのインクをつくって楽しみたいといった動機から手にされる方もいらっしゃいます。「このペンを買いたい」だけではなく「このペンを買うことで、どんな暮らしがあるのだろう」と考えるのが楽しくなるようなストーリー性を大事にしています。
イベント「INK. Ink. ink! ~インク沼へようこそ~」の様子

イベント「INK. Ink. ink! ~インク沼へようこそ~」の様子

10階 HandShake Loungeは銀座通り一望できる貸し会議室となっている

10階 HandShake Loungeは銀座通り一望できる貸し会議室となっている

大切なものを大事に使う -伊東屋創業からの大切な想い

  • ─ 時代とともに進化する伊東屋ですが、変わらずずっと大切にされているものについて改めてお聞かせください。
  • 「伊東屋に行けばなんでもある」というのではなく「伊東屋の選んだものだから安心して信頼できる」と感じていただけるような存在でありたいと考えています。また、お客様が気に入ってくださった大切なものを長く使っていただけるように、銀座本店の高級筆記具コーナーにはペンケアルームを設置し、修理・調整を可能にしているのもそのひとつですね。
  • ─ 好きなものを、大切に、長く使う。まさにエコの精神が引き継がれていると言えますね。
赤いクリップを目印に海外から訪ねてくるお客様も多い

赤いクリップを目印に海外から訪ねてくるお客様も多い

  • 2015年に銀座本店をリニューアルした時に、気持ちをひとつにするために、ビジョン・ミッション・バリューを書いた冊子をつくって、取引先様と社員に配布しました。使命や価値観、目指す世界や創業のストーリーなどを紹介しているのですが、新入社員やアルバイトも含め、スタッフとは読み合わせをして内容を共有し、何かが起こった際は、ここに立ち返るようにと伝えています。
  • ─ 読み合わせをするというのはすごいですね。
  • <テキスト抜粋>
    大切にしたい価値観
    ・新しいことやものの発見
    ・ずっと使い続ける
    ・人との関係を大切にする
  • ─ 最後に、銀座への想いをお聞かせください。
  • 時代が変わっていくなか、銀座という街にあるからこそ、ここまで続けてこられたという想いがあります。商品のクオリティの高さはもちろん、どのような方にも居心地よく過ごしていただける場所であるように心がけて、人が集まる場所をつくっていきたいと考えております。
宮坂 宏幸
株式会社 伊東屋 銀座本店 総支配人

宮坂 宏幸

1984年入社。10年にわたり外商部で法人外商に関わり、玉川髙島屋SC内の玉川店店長、商品部バイヤー兼マネージャーを経て、業態開発室部長として伊東屋初の関西地方に新業態店舗を出店。
また、ユナイテッドアローズ(現在閉店)やタリーズコーヒーとのコラボレーション店舗、空港内店舗、FC店舗の出店も行う。2016年より現職。
今井 麻希子
ライター

今井 麻希子

株式会社オルタナ
外資系IT企業等に勤務の後、2010年に名古屋で開催された生物多様性条約締約国会議(COP10)にNGOの立場で参加したことを契機に、環境やソーシャルの分野に仕事の軸をシフト。生物多様性やダイバーシティをテーマに、インタビューや編集・執筆、教育プログラムの開発や対話型カウンセリング・セッションを手がける。

取材・文:今井麻希子 / 企画・編集:株式会社オルタナ