CSR・CSV

サッポロライオン

Ginza×CSR・CSV Vol.19 サッポロライオン

クラシック演奏家の卵を育てる

2015.01.30

「銀座×CSR」第19回で紹介させていただくのは、ビヤホール「銀座ライオン」などを運営するサッポロライオンです。日本のビヤホール文化を築き、その一つとして音楽ビヤホールという文化を形づくり、クラシック演奏家の卵たちに発表の機会を提供しています。経営戦略部の西村礼佳さんに話を伺いました。。

銀座で愛され1世紀超

  • ─ 「銀座ライオン」の看板は、銀座の街では大変親しみ深い存在ですね。
  • 1899年、116年前に当社の創業にあたる「恵比壽ビヤホール」が、銀座8丁目に日本初のビヤホールとして誕生しました。「ビヤホールライオン銀座七丁目店」は、その後継店として誕生し、現存する日本最古のビヤホールとして昨年創建80周年を迎えています。

    銀座のお店はどこも、常連のお客様に支えられています。例えば、銀座七丁目店に新しい責任者が赴任すると、「君が生まれる前から通っている私の方がこの店のことをよく知っているから、何でも聞いてよ」なんて仰ってくださる、頼もしいお客様もいらっしゃるのですよ(笑)
  • ─ 銀座の街と地域のお客様とともに発展してこられたのですね。
  • 安全・安心な料理や飲み物、気持ちの良いサービスをお届けするのはもちろん、長い時を経ても、お客様が望まれる魅力ある店の雰囲気を維持し続けることが銀座の街の魅力づくりにもつながるのではと思います。

    また、年に2回開催される銀座通りの大掃除に、各店舗のスタッフが参加するなど、地域との関わりを大切にしています。八丁堀の本社でも、近隣の清掃を毎月早朝に行っていますが、自由参加にもかかわらず、毎回スタッフの4割ほどが参加しています。

昭和9年竣工当時のビヤホールライオン銀座七丁目店

外食業の食品ロスを減らす

  • ─ 店舗でより良い環境づくりのために取り組んでいることは何かありますか。
  • 店舗によっては、発生した生ごみを堆肥に再利用する業者に引き取ってもらっています。その前に、そもそもお客様に残さずに召し上がっていただけるよう、メニューのリニューアルの際は、美味しいお料理を提供できるよう考えたり、分量が適切かどうか見直したりしています。
  • ─ まずは、本業の中で環境や社会への負荷をいかに低減するかが大事ですね。
  • 2011年には、厚木に首都圏物流センターを設立しました。首都圏物流センターがない時は、各取引先から各店舗に直接納品していただいていたので、例えば「銀座ライオンビル」の裏には、食材などの納品のために1日平均45台のトラックが横付けしていました。

    それが今では1便のみとなり、深夜配送にしてたことで、近隣の通行の妨げになることが解消されました。またトラックの行き来があることは環境への負荷も大きいので、首都圏物流センターの設立によって、CO2削減にもつながっています。

クラシック界の裾野拡大に貢献

  • ─ 演奏家の育成にも取り組まれているようですね。
  • 「銀座ライオンビル」5階の「音楽ビヤプラザライオン銀座店は、食事をしながら、お一人様1,080円(税込) のミュージックチャージで、毎日4ステージのドイツビヤソングやオペラ、カンツォーネなどクラシックを中心とした演奏を楽しめる音楽ビヤホールです。演奏するのは藤原歌劇団や二期会などを中心とした音楽団体に所属し活動している方たちですが、そのほか演奏家の卵もステージに上がります。なかなかステージを踏む機会に恵まれない演奏家の卵たちに、日本のクラシック界の裾野を広げるためにも、発表のチャンスを提供しています。
  • ─ 多くの演奏家たちがここから巣立っていったのでしょうか。
  • 1988年の開店以来、500人以上の演奏家がこのステージに立ちました。有名な楽団に入っている方もいますが、音楽家の卵であっても、お客様からミュージックチャージをいただくに値するかどうか、実力はオーディションで厳しく審査してから採用しています。

    まずは当店でお客様に顔を覚えてもらい、ほかで演奏会がある時はステージで告知をしてもらうようにもしています。
  • ─ チャリティコンサートなども定期的に行っているようですね。
  • 当店がオープンした日付は、くしくも1988年の3月11日。そんな偶然も重なり、東日本大震災の復興支援ができないかと、隔月でチャリティコンサートを開催しています。

    チャリティコンサートで集まったミュージックチャージやお客様からの寄付金は、仙台の「被災地へピアノをとどける会」や仮設住宅の炊き出し用炊飯器などのために、寄付したり、被害にあった地域への演奏家派遣のための費用として使用しました。

    これまで14回開催した寄付金の合計額は、260万5,024円です。
  • ─ 音楽の力は偉大ですね。
  • こういったイベントが多く開催される被災地域もありますが、今回行った地域の中には、これまでほとんどそのような機会に恵まれなかった所もあったようです。中には手を握って涙を流して喜んでくださる方もいらっしゃって、開催して本当に良かったと感じています。

漫画でスタッフへ浸透

  • ─ 今後、CSRではどのような分野に重点的に取り組んでいく予定ですか。
  • CSRの取組みは、社会から非常に注目されるようになりました。特にコンプライアンスの遵守は、企業価値を保つ必要最低限の取組みです。
    例えば一昨年前、アルバイトスタッフが店舗で悪ふざけする写真をSNSに上げた「バイトテロ」が社会問題にもなりました。そういった行動一つで、これまで築き上げてきた、信頼を失墜させることにもなり得ます。
    当社としては、食の安全・安心はもちろん、ハラスメントのない職場づくりや情報保護の徹底、正しい飲酒方法など、コンプライアンスの遵守に注力していきます。
  • ─ 物理的に離れた店舗で、年代も高校生から幅広くいらっしゃるスタッフへメッセージを浸透させるのは難しいと思いますが、工夫されている点はありますか。
  • 分厚い冊子を配っても、忙しい業務中に読んではくれないでしょう。そこで、毎月大切なメッセージだけに絞って、4コマ漫画でカジュアルに楽しめるようなポスターを作っています。これであれば、休憩中に少しの時間で見てもらえますし、シリアスな内容でも敷居を下げることができると思います。

    お客様に接する店舗のスタッフこそ、私たちの理念を心得て、日々の接客やスタッフ同士のより良い店舗づくりに活かしてもらわなければいけませんので、今後も工夫を凝らして進めていきたいです。

4コマ漫画でスタッフにメッセージを届ける

サッポロライオン 経営戦略部 担当リーダー

西村礼佳

2005年、株式会社サッポロライオン入社。「ガストロパブ クーパーズ 汐留シティセンター店(閉店)」にて3年間勤務後、2008年より本社・経営戦略部に所属。
現在は、雑誌・テレビなどの取材対応やニュースリリース作成といった社外広報や社内の取組みを紹介する社内報の作成などの広報業務の他、CSRやコンプライアンスに関する教育などの業務を担当している。

インタビュアー

杉山 香林

株式会社オルタナ コンサルタント 外資系IT企業や広告代理店、PR会社で、マーケティング・コミュニケーション、および事業戦略、新規事業開発に従事。2008年に独立、社会的課題解決に向けた啓蒙プロジェクトや、企業とNPOの協働支援、CSR活動のコンサルテイング、実務推進サポートを行っている。

取材・文:杉山香林  企画・編集:株式会社オルタナ

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