CSR・CSV

リクルートホールディングス

Ginza×CSR・CSV Vol.3 リクルートホールディングス

若者たちの「働きたい」を応援
若者のための就職応援プログラム ホンキの就職

2013.06.17

最近、CSR(企業の社会的責任)という言葉を聞くようになってきましたが、銀座にも社会の課題解決に取り組む企業がたくさんあります。このコーナーは、そんな「銀座発CSR」をご紹介するシリーズです。3回目は、リクルートの就職応援プログラム「ホンキの就職」の越前谷匡史さんにお話を伺いました。

就職のリーディングカンパニーとして若者を応援

  • ─ 「ホンキの就職」とは、どのような取り組みですか。
  • 大学生、既卒者、フリーターなど、就職を希望する全ての若者を対象に、リクルートグループが提供している就活支援プログラムです。1日3.5時間の4日間プログラムと、3時間で完結する1日プログラムがあります。自己分析、就職マーケットの理解、面接練習などのテーマに沿って、内定獲得のための「考え方」と「行動」を変えていきます。
    座学で講師が一方的に教えるのではなく、グループワークを通して参加者自らの気づきを促す「グループ・ダイナミクス」という手法を用いているのが特徴です。応募資格は特に設けておらず、希望者は誰でも無料で参加できます。
  • ─ 現代の若年層の就職状況は社会問題にもなっていますね。
  • リーマンショック後の景気後退時から、若年層の雇用問題が注目されるようになりました。政府による最新の調査(図1)では、15~24歳までの完全失業率が6.6%、34歳までの完全失業率も6%と高止まりしています。また、大卒者のうち16%が進路未決定であることも大きな問題です(図2)。
    As a leading company in the recruitment field, the Recruit Group wants to aggressively resolve these social problems. We also リクルートグループは、就職の領域におけるリーディングカンパニーとして、このような社会課題を積極的に解決したいと考えています。私たちには、これまでリクナビを通じて大学生に就職プログラムを提供してきた実績など、長年の事業で培った知見もあります。そこで、若者たちが就職したいという気持ちをなんとか後押ししようと、2011年に「ホンキの就職」をリクルートのCSR活動の一環として開始したのです。

図1:平成25年6月労働力調査(総務省統計局)

図2:平成24年度学校基本調査(文部科学省)

雇用環境に左右されない個人の基礎力を伸ばす

  • ─ 就職が困難な若年層に共通して見られる課題はありますか。
  • 大きく3つの要因があります。1つ目は、特定の業界、業種へのこだわりが強すぎること。2つ目は、行動力が足りないことです。3つ目は、面接スキルが足りないことです。考えが凝り固まっていたり、採用が決まらずに自信を無くしていることに起因するようです。
    一般的な採用では、書類の通過率が20%程度なので、内定を獲得するためには30〜40社は応募する必要があります。しかし、就職が決まらない若者の応募件数は、平均4社に留まっているのが「決まらない」理由だと思います。
  • ─ 昨今の企業側の雇用環境は、若年層の就職に影響を与えていますか。
  • 最近は企業側の採用意欲も持ち直しています。ただ、景気動向や雇用環境に関わらず、就職を希望していながら内定がもらえない若者は、いつの時代でも一定数いました。
    その層に共通する3つの課題に対応した解決策を提供することが、この就職支援プログラムの目的です。言い換えれば、個々の基礎力を高めれば、どのような雇用環境であっても内定獲得への効果が発揮できるのです。

グループのリソースを結集させたCSR活動

  • ─ 御社ならではのCSR活動と言える点はどのあたりですか。
  • リクルートグループ各社の知見や社員の知恵など、生きたリソースを活用しているところです。例えば、リクルートキャリアでは、求人紹介サービスの「リクナビ」や「就職Shop」の運営で若年層との接点を持っているので、就職における課題把握が可能ですし、ノウハウも活かすことができています。また、リクルートマネージメントソリューションズでは、モチベーションの研究や、研修の提供を行なっていますので、そこで培われたプログラム開発能力が「ホンキの就職」にも活かされています。
  • ─ 他団体との連携はどのように行なっていますか。
  • 自社開催は銀座のオフィスで行なっていますが、他団体にファシリテーターを派遣することで開催場所を全国に広げています。2012年度は、NPO法人「育て上げ」ネット様などと協働し、全国27拠点、大学では40校が実施しました。

無償サービスでも最高の品質を

  • ─ 「ホンキの就職」参加者の成果はいかがでしょうか。
  • このプログラムでは、6件以上応募した既卒参加者の3カ月以内の内定率は、68.8%に至っています。
    参加者同士で褒め合いが生まれるような仕掛けを設けているので、自分を過小評価していた参加者が自信を持つようになります。
    また、仲間意識が芽生えて「次回までに3社応募するよ」といった約束を交わしたり、お互いによい刺激を与え合うことができています。そういった内発的なモチベーションが、行動や考え方を変える結果につながっているようです。
    初日は話をすることも躊躇していた参加者が志望する企業へ積極的に応募するようになったり、内定したというハガキをもらったりすると、本当にやっていてよかったと実感できます。
  • ─ 今後の展望を教えてください。
  • 今後は、より多くの拠点で実施できるようにすることと同時に、「ホンキの就職」の良さを理解していただける同志を増やしていきたい。そのため、連携しているNPO団体や大学で、ファシリテーターの養成を既に始めています。
    無償で提供しているからといって、そこそこのレベルで良いとは思っていません。月に1回、自社のファシリテーターを集めて、実施方法やファシリテーションを常に改善しています。これからもより良いプログラムを提供できるようにブラッシュアップしていき、若年層の就職を効果的にサポートしていきたいです。
  • ─ 御社は銀座とのゆかりが深いですね。
  • CSR活動の一環として、銀座で「クリエイションギャラリーG8」と「ガーディアン・ガーデン」の2つのギャラリーを運営しています。リクルートが銀座に2つのビルを持ったことから、銀座の街の活性化の一助になればと思いオープンしました。「デザインを通じた新しいコミュニケーション提案の場」、「クリエイター育成の場」として銀座の街に貢献して行きたいと考えています。
    銀座には、社会貢献に熱心な企業がたくさんあるようなので、いつか複数社集まってコラボレーションできたら素晴らしいですね。

ホンキの就職 グループワークの様子

リクルートホールディングス ソーシャルエンタープライズ推進室 CSR推進部

越前谷 匡史

大学卒業後に株式会社リクルートに入社。
人事部新卒採用担当を経て、グループ会社のリクルートエイブリック(現リクルートキャリア)に出向・転籍。転職活動者へのアドバイスを行うキャリアアドバイザーとして、総勢2000名近くの方と面談を行う。
転職希望者、セミナーの参加者の可能性を信じることをモットーとしている。

インタビュアー

杉山 香林

株式会社オルタナ コンサルタント 外資系IT企業や広告代理店、PR会社で、マーケティング・コミュニケーション、および事業戦略、新規事業開発に従事。2008年に独立、社会的課題解決に向けた啓蒙プロジェクトや、企業とNPOの協働支援、CSR活動のコンサルテイング、実務推進サポートを行っている。

取材・文:杉山香林  企画・編集:株式会社オルタナ

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