CSR

スワン

Ginza×CSR Vol.13 スワン

スワンベーカリー
障がい者にも経済的自立と働く喜びを

2014.05.19

「銀座×CSR」第13回で紹介させていただくのは、焼きたての手作りパンを販売するスワンベーカリーです。1998年、障がい者の経済的な自立を実現するためにオープンし、現在は銀座1号店をはじめとする直営店4店、チェーン店24店で350人以上の障がい者を雇用しています。目指すのは、低賃金からの脱却だけでなく、働く喜びを感じてもらえる機会の提供。岡村正代表取締役社長にその思いをお聞きしました。

低賃金脱却には消費者が求める事業を

  • ─ おいしい焼き立てパンは、さまざまな立場の方によって作られているようですね。
  • スワンベーカリーでは、身体や知的、精神的に障がいのある方を積極的に雇用しており、全店で約350人が働いています。ヤマトグループ全体では1,811人で、障がい者雇用率は1.94%です。(2012年度)
  • ─ 障がい者の法定雇用率2%を達成している企業は半数にも満たないようです。なぜ御社は障がい者の雇用に積極的なのでしょうか。
  • スワンベーカリーは、ヤマト運輸の元会長・小倉昌男が個人資産で設立したヤマト福祉財団と、ヤマト運輸によって作られました。
    当初、小倉は、共同作業所でペン立てなどの作品を作る障がい者の賃金が月1万円ほどに留まっていることに疑問を感じていました。そういった方々の人間としての尊厳を守るためには、正当な賃金を提供して、社会参画する喜びを感じてもらうことだと考えたのです。

スワンベーカリー銀座店

  • ─ 障がい者の平均賃金は月1万円ほどとのことですが、スワンベーカリーではどの程度でしょうか。
  • 障がい者年金と併せて年間200万円の収入があれば、経済的に自立している方々と同じレベルに達します。それを1つの目安として、一人当たり月約10万円のお給料をお渡しできるようにしています。
  • ─ 低賃金からの脱却に必要な経営のポイントは何でしょうか。
  • 「消費者に必要とされるものは何か」という観点で商品・サービスを生み出すことです。
    もちろん、共同作業所での営みは尊いものです。ただ、消費者が求めるものではなく、作れるものを作るという発想では、この市場経済の中で長期に渡って収益を確保することは難しいでしょう。善意で購入していただくのも限界があるかもしれません。
    お客様は、価値があるものに対してお金を払ってくれます。そのような事業ができれば、より高い賃金での雇用が可能になります。
  • ─ 障がい者の経済的自立の障壁となるものはありますか。
  • 雇用側の一部には、「障がい者を働かせてお金を儲ける」といった、ある種の虐待に近いイメージを持ってしまうこともあるようです。こういった感覚は、大変残念です。なぜなら、社会の構成員として誰かの役に立ち、働く中で成長を実感することこそ、人の根源的な喜びだからです。それは、障がい者であっても変わりません。

    障がいを持った方の経済的自立、社会的自立、そして精神的自立を支えるお手伝いをする。それは、社会の公器である企業が果たす責任ではないでしょうか。

ご縁から生まれたベーカリー事業

  • ─ スワンベーカリー誕生の背景を教えていただけますか。
  • 財団設立5年目となる1998年ころ、障がい者雇用の受け皿となる事業の展開を検討していました。そんな折に、「アンデルセン」「リトルマーメイド」を全国展開しているタカキベーカリーの高木誠一社長と小倉が、ある対談企画で出会いました。
    事業成功のポイントとなる、「消費者に必要とされる商品」を考えた時に、毎日家庭で消費されるパンは最適な商品でした。
    そこで、高木社長のご理解、ご協力を得て、同社が独自に開発した冷凍パン生地をご提供いただき、手作り焼きたてパン販売のスワンベーカリーが誕生することになったのです。
  • ─ 障がいを持っていても作業がしやすいような工夫はされていますか。
  • パンを作る工程を全て1人で受け持つことは大変レベルが高い作業になります。でも、その工程を細分化して役割分担することで、スタッフの特性に合ったパートの作業を受け持つことができます。

    そして、あるパートが完璧にこなせるようになったら、他のパートにも挑戦していただく。そのようなプロセスを踏むことで、できることが少しずつ増えて、成長を実感してもらうこともできています。

抹茶マフィン

キャラメルコーヒーメロンパン

ツナ&コーン

成長を信じ続ける

  • ─ スタッフの成長を見届けられることも喜ばしいですね。
  • あるスタッフがマドレーヌの箱を組み立てる作業に挑戦していました。でも、いくら頑張っても、形にならない日々が長く続きました。親御さんも諦めていたようです。
    ところが、挑戦し始めて3カ月と3日目、ついに組み立てることができたのです。嬉しさのあまり、もういいと言っても彼の手は止まらず、いくつも、いくつも作り続けました。指導していたスタッフは泣き崩れました。

    そういった障がい者の可能性を周りのスタッフがどこまで信じられるか。それは根気がいりますし、非効率です。でも、社会の公器としての役割である企業に、法定雇用率のほんの2%分くらい、そういったコストを支払う対象があっても良いのではないかと思うのです。
  • ─ スタッフの皆さんには、どのような共通認識を持つように指導されていますか。
  • 「認めて、信じて、支え続ける」、「誰一人欠けることなく仕事をやっていこう」、「仕事は楽しくやろう」ということを、特に伝えています。
    スワンでは、「障がいのある人・ない人」という線引きはありません。「〇〇が得意な〇〇さん」、「〇〇が少し苦手な〇〇さん」というように特性を把握し、スタッフ間で助け合っています。5~10人集まれば長所の連鎖ができ、得意なところで活躍できると考えています。
    「障がいを持つ」という言い方もしないようにしています。持ちたくて産まれたわけではないと考えているからです。
  • ─ 障がいを持った方を迎えることで、周りのスタッフやお客様へはどのような影響があるでしょうか。
  • 障がいのある方と共に働く職場では、気遣いや環境整備が必要になってきます。そういった心配りの習慣が、スタッフ間の日常のコミュニケーションの中にも活かされていき、風通しがよく、柔らかい職場環境が作られていくようです。生活指導員などの資格を取る者も出てきました。

    スワンカフェのお手洗いに設置してあるご意見ノートには、お客様からの温かいメッセージが書かれています。「仕事で落ち込んでいたけど、スタッフの接客で元気が出た」といった声を頂くこともあります。

    スタッフが真摯な態度で、たどたどしくも一生懸命働いている姿が元気を与える1つの源になっているのであれば、それは立派な社会参画です。
スワンベーカリーに併設されているスワンカフェ

一人ひとりを主人公に

  • ─ スワンベーカリー事業で大切にされていることは何ですか。
  • 仕事で大切な3つの原則があります。「何をやるか」、「どのようにやるか」、そして最も大切なものが「どんな思いでやるか」です。

    どんな人であれ、その立場を演じる主人公はその人しかいません。ですから、可能性を1つでも発見して、人としての成長を促してあげたいと考えています。一企業のほんの些細な試みかもしれませんし、そのような思いはバランスシートには乗りません。それでも、小倉の遺志を継いでがんばっていきたい。そんな思いで続けています。
  • ─ 銀座の街への愛着も深いのではないでしょうか。
  • 「銀座は「大人の粋」がある街です。品の良い方が集まっているのは昔も今も変わりません。着流しの男性が歩く姿が似合うのも銀座だけではないでしょうか。スワンベーカリーも、銀座の一部として訪れた方に魅力を感じていただけるように続けていきたいです。

株式会社スワン 代表取締役社長

岡村 正

1958年12月30日生まれ
1981年4月 早稲田大学第一文学部卒業後、ヤマト運輸株式会社に入社
1977年6月 広島主管支店長就任
2000年6月 人事課長就任
2002年6月 東京主管支店長就任
2004年4月 執行役員 北信越支社長就任
2005年10月 執行役員 東京支社長就任
2008年4月 経営戦略部長就任
2012年4月 ヤマトフィナンシャル株式会社 取締役常務執行役員 経営戦略部長就任
2014年4月 株式会社スワン 代表取締役社長就任 現在に至る

インタビュアー

杉山 香林

株式会社オルタナ コンサルタント 外資系IT企業や広告代理店、PR会社で、マーケティング・コミュニケーション、および事業戦略、新規事業開発に従事。2008年に独立、社会的課題解決に向けた啓蒙プロジェクトや、企業とNPOの協働支援、CSR活動のコンサルテイング、実務推進サポートを行っている。

取材・文:杉山香林  企画・編集:株式会社オルタナ

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