CSR

白鶴

Ginza×CSR Vol.14 白鶴

白鶴銀座天空農園
銀座ビル屋上の田んぼが育む食と人のつながり

2014.06.23

「銀座×CSR」第14回で紹介させていただくのは、日本酒醸造メーカー白鶴の「白鶴銀座天空農園」です。銀座の東京支社ビル屋上で、独自開発した酒米「白鶴錦」や、日本各地の特産品種の野菜を栽培している小田朝水農園長に話を伺いました。

銀座で米作りを通して日本酒文化を発信

  • ─ 銀座といえば流通と消費の街というイメージがありますが、なぜ銀座ビルの屋上で米や野菜の生産を始めたのでしょうか。
  • 私は、もともと本社のある神戸の蔵で酒造りをしていました。ある時、「東京支社のある銀座から日本酒文化の情報発信ができないか」という話が持ち上がりました。それなら清酒の主原料となる米をビルの屋上で作ってみてはどうかという案が出て、2007年に私が農園長となり、その挑戦を始めることになったのです。
  • ─ 新しい試みでご苦労もあったのではないですか。
  • 長年酒造りはしてきましたが、酒米作りの経験は全くありませんでした。都会のビルの屋上で米作りを成功させた前例もなかったので、誰に相談すれば良いかも分からない状況だったのです。
    それでも、社員と共に、見よう見まねで土を調合してみたり、試行錯誤の連続でしたね。初年度は、田んぼを作るのではなく、試験的に酒樽41個、プランター100個を使って栽培をスタートしました。

    社員の家族も呼んで初めて田植えをした稲の苗は、秋に無事立派な穂を付けてくれ、収穫できたお米は約10kg。本社の米も足して、初年度は6リットルのお酒を造ることができました。その後は、毎年約50kgの米がコンスタントに収穫できるようになっています。

屋上農園では、米以外の作物も栽培している

手間を省いては良い作物はできない

  • ─ ビルの屋上は米の生育に不利な環境ではないのでしょうか。
  • 屋上では土を10cmくらいの厚みにしか盛れませんので、肥料の量や天候の変化など、少しの違いが大きな影響を及ぼします。
    米に限らず、作物は朝晩の温度差がある環境が好ましいと言われます。一日中暑いと、生き物は活動し続けようとしてしまい、生育するエネルギーを貯めるために休むことができません。そのため、ネオンで24時間明るく、夏は熱帯夜が続く都会のビルの屋上では、活動と休息のメリハリがなく、米にとっては生きづらい環境のようです。人間と同じですね。
  • ─ それでも米栽培は今年で8年目ですね。どのようにして酒米の品質を保っているのでしょうか。
  • 平日も日曜も、そしてお盆休みも、この農園にやって来ては米と対話をして、手をかけています。
    例えば、暑い夏の日には、午後3時頃に一旦田んぼの水を抜いて、冷たい水を入れ直してやるのです。無農薬栽培ですので、発生した害虫も一匹一匹手作業で駆除しています。毎日、稲の反応を観ながら、必要な対処を手抜きせずにやる。その積み重ねで良い酒米造りができているのではないでしょうか。
  • ─ 厳しい環境下でも、手間暇をかけることで良い米作りができるのですね。
  • 一昨年から、米の成分等を検査してランク付けを行う「米穀検査」を受けています。私たちが作っている稲は、「白鶴錦」という東京都の登録米ではない品種のため、2等級が最高評価となります。ありがたいことに、2年連続で最高ランクの2等級を取得することができました。

子どもたちに手作業と食物の尊さを伝えたい

  • ─ 天空農園は、子どもたちの食育の場としても活用されていますね。
  • 京橋築地小学校の5年生の生徒に田植え・稲刈りを体験してもらうようになり、今年で6年目です。 収穫した米は、精米して毎年1月末に学校へ届けているのですが、いつも生徒たちがおにぎりとお味噌汁を作るイベントに招待してくれます。鍋でご飯を炊くことには、先生ですら慣れていませんので、たまに水加減がうまくいかなかったり、お焦げが多すぎたりする場合もあります。

    でも、それで良いのです。スイッチ1つでご飯が炊けると思っていた子が、苗から稲が育ち、手作業で収穫し、手間をかけてご飯を炊くことを体験することが重要です。体で覚えたことは大人になっても忘れません。
  • ─ 米作りを通して、子どもたちに何を伝えたいですか。
  • 「何かモノを作るためには、中途半端ではいけない」ということです。ある子どもから、「楽な仕事は何か」と聞かれました。「楽な仕事は苦労の裏返しであって、はじめから楽な仕事などない」と伝えました。

    農業であれば、手間をかければかけるほど作物から結果が返ってくる。そこでやっと楽しいと思えるものです。どんな仕事でも、手間を惜しまず愛情を込めることが大切だということを伝えられればと思っています。
  • ─ 参加した子どもたちにアンケートを取っているようですね。どのような声が寄せられますか。
  • 「食べ物を残さずに、大切に食べるようにしたい」と言ってくれる子が多いです。そのような意識の変化があることはとても喜ばしいですね。
    都会の農園なら、子どもたちも気軽に田植えや稲刈りの体験ができます。食育の一環として、食物のありがたさや手仕事の尊さを知る子が増えてくれれば嬉しいですね。あとは、「20歳になったら白鶴を飲みたい」と言ってくれる子もいますよ(笑)
稲刈り時の様子

収穫したお米を使用して、おにぎりとお味噌汁づくり

銀座から日本各地の街おこしをしたい

  • ─ 銀座で農園を運営する意義はどのあたりにあると考えていますか。
  • 天空農園では、酒米以外にも高知県産のショウガ、大分県産のカボスなど、一都14県の名物野菜を栽培しています。例えば、熊本県の「はちべえトマト」という冬トマトをバーテンダーに提供したところ、カクテルに最適だったらしく、熊本から取り寄せていただけるようになりました。

    このように、PR力のある銀座で日本各地の特産品を発信すれば、地方の活性化につなげていける。人が集い、ブランド力のある銀座だからこそできていることです。
  • ─ 天空農園を運営されていて、どのような事に喜びを感じますか。
  • 多くの「出会い」があることです。天空農園の酒米から造られた清酒は、「白鶴銀座天空農園の酒」として、三越、松屋に600mlボトルで合計30本を販売していただいています。

    各種野菜は銀座の飲食店やバーに提供しています。収穫祭では、栽培している野菜の各産地から県知事もお越しいただきました。このように、銀座のビルの屋上を起点に、生産と流通、消費、情報発信による人のつながりが生まれています。

    また、この屋上農園を参考にしたいと、農家の方、養護老人ホームで屋上菜園を作りたい方が視察に来られたり、肥料メーカー、メディア、大学教授に至るまで、さまざまな方との出会いが生まれます。出会いがあることで情報交換ができる。そして、また新しいことに挑戦ができるのです。

    今、農園では江戸時代から東京周辺で栽培されていた「江戸東京野菜」を作付けしているのですが、東京オリンピックの時に、この野菜を海外から訪れた要人に振る舞うことが夢なのです。

白鶴酒造株式会社  白鶴銀座天空農園 農園長

小田 朝水

1953年 熊本県生まれ
1972年 地元高校卒業
1972年4月 白鶴酒造(株)本社入社
1988年 東京支社勤務

インタビュアー

杉山 香林

株式会社オルタナ コンサルタント
http://www.alterna.co.jp
外資系IT企業や広告代理店、PR会社で、マーケティング・コミュニケーション、および事業戦略、新規事業開発に従事。2008年に独立、社会的課題解決に向けた啓蒙プロジェクトや、企業とNPOの協働支援、CSR活動のコンサルテイング、実務推進サポートを行っている。

取材・文:杉山香林  企画・編集:株式会社オルタナ

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