CSR

アルビオン

Ginza×CSR Vol.5 アルビオン

経営理念を具現化するCSR
事業所内保育所「Kuukids」

2013.08.28

「銀座×CSR」第5回は、銀座本社の近くで保育所「Kuukids(クーキッズ)」を運営する化粧品メーカーのアルビオンです。このプロジェクトには、女性の顧客・社員をたくさん抱える化粧品会社の社会的責任とともに、多様なライフスタイルを持つ銀座に「恩返し」という意味があります。「美・育・環」というキーワードを軸としたCSRが企業価値の向上につながった好例でもあります。

土日勤務の美容部員に子育ての選択肢を

  • ─ 銀座の本社近くで事業所内保育所「Kuukids」を運営しているそうですね。
  • アルビオンの社員と近隣地域の契約企業が共同利用可能な事業所内保育所で、2009年4月1日、東京都中央区銀座1丁目にオープンしました。2013年7月現在、0~3歳児まで17名が在籍しています。近隣の居住者の方にも一時預かりとして40名程にご利用いただいています。土日祝日でも21時まで開園しているところが特徴です。運営は、保育の専門事業者である株式会社ポピンズに委託しています。
  • ─ 化粧品メーカーでありながら、CSRの取り組みとして保育所を始めたのはなぜですか。
  • CSRグループを立ち上げた2008年当時、社会的な待機児童問題のほか、美容部員が土日祝日の勤務日に子どもを預ける場所がないという問題が顕在化してきました。弊社は社員の約70%が女性です。女性スタッフが働き続けたい時に、望む形で就労できるよう、環境を整えたいと思いました。

    そして、CSRプロジェクト第一弾として、事業所内保育所設立の提案を弊社社長に提案したのです。すると、「社員だけでなく、次世代を担う子どもを守るためにも、すぐやろう」と即決してくれました。2008年5月に企画書を出して、翌年4月にはオープンという異例のスピードで実現しました。

事業との親和性より経営理念を軸に

  • ─ アルビオンの経営理念やCSRのキーワードである「美・育・環」は、Kuukidsとどのように関連していますか。
  • 高級化粧品メーカーとして大切にしていることは、「本物志向」であることです。「美」を支える商品はもちろん、お客様のご満足のためには、美容部員や携わる社員も一流でなければなりません。そのため、人材育成を大切にしており、「育」は重要なキーとなっています。そこから人を大切に思い、人と人とのつながりを大事にするという「環」の理念が確立しました。

    21時まで開いている事業所内保育所というと、社員を長時間働かせるためにつくったように誤解されることもあります。でも、子育てをしながら働くことを望む社員がいる時に、私たちはその選択肢を提供したい。土日や遅い時間に違う保育所に預ける二重保育は、子どもに負担なのでさせたくないのです。そういったKuukidsの存在理由は、「人を大切にする」という企業理念に直結しています。
  • ─ なぜ他企業も利用できるようにしたのですか。
  • 銀座にはサービス業者がたくさんあります。販売員などで活躍されている女性が、同じように子どもを預けられずに困っているのではと思いヒアリングをしました。すると、出産を諦めたり、出産後に仕事を辞めたりする方が多いと分かりました。そこで、銀座の街の女性たちと子供たちを育てる「環」を広げていければと思い、近隣の他企業社員にも利用していただくことにしました。現在は8社と契約をしています。

すべて「人を大事にする・活かす」を基準に判断

  • ─ 保育所施設は一から全て設計されたそうですが、こだわった点はどこでしょうか。
  • 第一に安全安心です。例えば施設内には廊下がなく、保育士が全ての部屋を見渡せる放射線状のレイアウトが特徴です。また、遊戯室のカラフルな手作りの扉や、アクリルやビー玉の柱、化粧品容器に使用しているフィルムを使った照明、アトリエとダイニングのカラータイルなど、子どもの創造性や感性をはぐくむデザインを取り入れました。

    手作りの給食を食べてもらいたいので、キッチンも設けています。また、東京都の事業所内保育所設置事業として助成を受けているので、施設の造りと運営レベルは、東京都の認証保育所とほぼ同じ基準をクリアしています。
  • ─ 子どもたちの教育にも熱心に取り組んでいるようですね。
  • 親としては、毎日長い時間預けているので、子どもの成長も気になるはずです。事業所内保育所は、社員の復職のために預かるだけの施設だと思われがちですが、子どもの成長も助けることが元々のコンセプトですので、 私たちは「教育施設」として捉えています。

    リトミック(リズムを使って音楽を体で体験し、想像力や表現力を養うことで、心と体の調和を作り出す総合教育)の授業をしたり、世界の地理や文化、音楽などに触れる機会も設けています。また地域の一員として京橋公園のアダプト制度を利用し花壇の手入れをしたり、銀座の街をもっと知ってもらおうと、宝町から東京スクエアガーデン、和光を回って歌舞伎座を一周する社会科見学も行いました。
  • ─ 他社の事業所内保育所とはどのような点が違いますか。
  • 一般的に、保育所では決められた時間に一斉登園しないといけません。でも、シフト制で働く美容部員は、出社時間が変動するので、登園時間に関しては柔軟に対応しています。また、接客サービス業では、子どもが突然風邪をひいても、すぐに迎えに行くことは難しいことへの配慮や、そのほか通常お母さんが持ち込むお布団やオムツなども、通勤の負担を考慮して保育所で支給しています。

    人事的な意味合いのために設けた保育所ではなく、人を大事にするために始めた施設なので、そのために協力してくださるよう、委託先のポピンズにはお願いしています。とても細やかに対応してくださるので助かっています。

子供の感性を刺激する手触り感や色にこだわった、用具棚の手作り扉。
棚の角は丸みを帯びた作りに。上にあるのはビー玉の柱。

毎日の給食を作るキッチン。子供アレルギーにも対応している。

京橋公園のアダプト制度を利用した花壇の手入れのボランティア活動。

保育所の看板には社名は入れない

  • ─ 「Kuukids」には社名もロゴも入れていませんね。PRのために入れようとは思いませんでしたか。
  • 短期的なPRよりも、「誰のための保育所か」が重要です。まず、子どもの気持ちを考えたら、自分たちの「母校」には会社名が付いていない方が良いでしょう。それに、Kuukidsを利用していただいている他の企業様にも、看板にアルビオンの社名が入っていなければ、自社の保育所として心置きなく紹介できます。

    つまり、利用する人と子どもたちのための保育所であることを考えたら、社名は自然と入らなくなったのです。「人ありき」の企業理念がこういったところにも一貫して現れています。
  • ─ 事業所内保育所の取り組みは、どのような成果がありましたか。
  • 子どもを産んでも働き続けることができるという環境基盤が整ったことで、2012年度3月末の育児休業取得数は、約120名と、保育所設置前(2008年度45名)と比較し、約2.5倍にも増加しました。育児休業後の復職率は、2012年度実績で96%にも達しています。

    子育てをしていない社員を含め、多くの社員が働きやすさに対する意識を変えたこと、そして、「アルビオンは地域社会に貢献している」という社員の実感が増してきたことも大きな成果と言えます。社員からの喜びの声も直接届くようになって、やってきて良かったと感じています。

小池さんに寄せられたKuukids利用社員からの感謝の手紙。
持ち歩いて励みにしているとのこと。

銀座の街のようにチャレンジと進化を

  • ─ 銀座で創業されて半世紀以上になりますね。
  • 銀座とアルビオンが共通するところは、これまでの歴史や文化も大切にしながら、進化したり新しい挑戦をしたりするところです。Kuukidsもチャレンジングな試みです。弊社の社長が提案を即決したのも、常々、前例のないことや新しいことに取り組む企業であり続けたからこそだと思います。私たちは、銀座の街に育てていただいているという意識を強く持っています。Kuukidsを、伝統を守りながら変わり続ける銀座にふさわしい取り組みにしていきたいと思います。
  • ─ 「Kuukids」の取り組みは、社会貢献にとどまらず、企業価値向上に寄与しているとお考えですか。
  • お客様の声を聞くと、商品を選ぶ時、好きな香りや感触といった商品特性だけではなく、会社の思いや信頼度を基準にする傾向が強まっています。これからは、会社の姿勢を商品に乗せて伝えるということも大事になってくるでしょう。社員もそれを自分たちの言葉で伝えられるようにならなくてはいけません。

    保育所を通じても、「人を大切にする」という企業理念が社内外に浸透しつつあります。それがアルビオンの企業価値や信頼度を押し上げることにつながってくれているようです。子どもを産んでも働きつづけられる、という社員の認識が定着したことも価値の一つです。実は今、社員の第二子出産ラッシュなのです(笑)。

株式会社アルビオン 総務部 CSRグループ係長

小池 愛美

外資系小売業で財務会計職、外資系コンサルティング会社でコンサルタント職を経て、2008年アルビオンCSRグループ立ち上げ時に入社。入社1ヶ月で女性の働く選択肢を増やして就労継続を支援し、社会課題である待機児童削減に貢献できる保育所「Kuukids」を企画した。
現在は「Kuukids」の事務局だけでなく、アルビオンの社会貢献活動全般と、社内の「子育て・介護就労継続支援プロジェクト」の事務局を担当している。

インタビュアー

杉山 香林

株式会社オルタナ コンサルタント 外資系IT企業や広告代理店、PR会社で、マーケティング・コミュニケーション、および事業戦略、新規事業開発に従事。2008年に独立、社会的課題解決に向けた啓蒙プロジェクトや、企業とNPOの協働支援、CSR活動のコンサルテイング、実務推進サポートを行っている。

取材・文:杉山香林  企画・編集:株式会社オルタナ

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