CSR

銀座木村家

Ginza×CSR Vol.29 銀座木村家

日本独自の「酒種」を継承 銀座から焼きたてのパンを届ける

2018.03.01

「銀座×CSR」第29回で紹介させていただくのは、日本で最も古いパン屋と言われ、「酒種あんぱん」で有名な銀座木村家です。木村屋總本店を経営母体として、暖簾分けによって全国に「木村屋」のブランド名が広まりましたが、銀座木村家は創業当初から変わらず、銀座で焼きたてのパンを提供し続けています。その思いを代表取締役 社長の木村美貴子さんに伺いました。

日本に「パン食」の文化を育てる

  • ─ 当時の木村屋さんが日本で初めて考案した「あんぱん」は、今では日本人にとってとても馴染み深い食べものですね。
  • 木村屋の創業は明治2年で、初代は明治維新によって職業をなくした武士でした。長崎の出島で、オランダ人の屋敷で働いていた職人と出会い、製法を聞いてパンづくりを始めました。

    当時はパンを早く発酵させるイーストもなく、ホップを使っていたので、硬くて日本人の口には合いませんでした。そこで酒饅頭をヒントにして酒種を考案し、もっちり、しっとりとした食感のパンにあんこを包み「酒種あんぱん」を作りました。山岡鉄舟先生のご推挙で明治天皇に「酒種あんぱん」を献上し、それからほとんど製法も変えずに、今の時代に引き継がれています。明治の半ば、日本人に不足していた栄養素がパンに含まれているということで「パンを食べると脚気が治る」と注目された時代もありました。
  • ─ 全国に木村屋ブランドがありますが、フランチャイズではなく「暖簾分け」で、ロイヤリティも取っていないそうですね。
  • 昔から、グループ会社である木村屋總本店の営業エリアは、関東だけなんです。暖簾分けをして、それぞれ地元で頑張っている方々の地域に本家が出ると、そのお店を潰してしまう可能性があります。暖簾分けをした皆さんに全国で頑張ってほしいので、そうしています。 創業の時代から「パン食を日本に広めたい」という思いがありましたので、あんぱんの特許も取っていません。
山岡鉄舟氏による「木村家」の看板。これが木村「家」の原点とされる。暖簾分けする際、親戚筋は屋号に「屋」を使った

山岡鉄舟氏による「木村家」の看板。これが木村「家」の原点とされる。
暖簾分けする際、親戚筋は屋号に「屋」を使った

酒種あんぱん

酒種あんぱん

「酒種」という発酵文化の豊かさ

  • ─ 銀座木村家は、銀座の一等地で焼きたてのパンを提供しています。パンの製造もこのビルで行なっていると伺いました。
  • このビルは、木村屋總本店100周年に祖父が建てました。お客様も銀座の本店を見て、木村家を感じてくださっています。銀座木村家は何があっても、正直にまじめに商売をして、常に木村屋グループのトップであり続けるような事業をするように意識しています。

    「お冷(冷めたパン)をお客様にお出しするわけにはいかない」という気持ちから、パンの製造もこのビルで行なっています。それから、お客様の健康と味覚の楽しみを届けたいという思いが、創業以来変わらずにあります。どんなに時代が変わっても、できるだけ天然のものを使ってパンをつくるようにと心がけています。

    効率を求めれば、イーストを使って3~4時間でパンができます。自然発酵のものは、菌の状態によって発酵の早さが違いますし、種起こしから1週間でようやくできるというものもあって、効率的ではありません。それでも、天然の酵母にこだわっています。
銀座木村家本店 外観

銀座木村家本店 外観

銀座木村家のパン工房

銀座木村家のパン工房

  • ─ 毎朝お米をとぎ、酒種をつくるところから1日が始まるそうですね。
  • 酒種は日本にしかない酵母なんです。ベルギーに本社を置く製菓製パンの原材料メーカーが、世界中から地域特有の発酵種を集めてライブラリーを運営していますが、そこに日本の酒種を展示させて欲しいということで、日本で唯一、木村家に声が掛かりました。

    世界中に地域特有の発酵種がありますが、扱う会社などに後継者がいなくて廃業されることも多いのです。その発酵種を後世まで残したいという思いから非営利でライブラリーを開設しているのです。木村家の酒種も、そのように後世まで守りたいと思っていただけるのは有難いことだなと思います。

    本当に、発酵ってすごいですよ。たとえば発酵作用でフグの毒消しをする、なんていう話もあるんです。昔の知恵ってすごいな、発酵ってすごいなって、本当に思いますね。
  • ─ 銀座には世界各国から多くの人たちが訪れますが、どのようなことを発信したいとお考えですか?
  • 海外のガイドブックに「日本で最古のパン屋さん」と取り上げていただいたこともあって、ご来店数の3~4割が海外からのお客様です。海外からのご来店は日本独自のパンを知っていただく良い機会だと思います。西洋の方や、あんこ離れしている日本人の方にも抵抗なく食べていただけるように、フランスパンの生地にあんこをいれたあんバターパンなども開発しました。木村家は、日本の食文化を一層知っていただく助けになりたいのです。
銀座木村家本店 1階店内

銀座木村家本店 1階店内

人への思いやりを大切にするまち、そして企業に

  • ─ 木村屋總本店では、「五つの幸福」(*1)と「四大目標」(*2)を掲げていらっしゃいます。今でいう「CSR」に近いものだと思いますが、こちらは銀座木村家さんでも共有されているのですか?
  • はい、共有しています。ずっと当たり前のように大切にしてきたことです、震災などが起こった時に、救援物資としてパンをお届けするということはしていますが、特にCSRという言葉を意識したことはありません。お客様も(五つの幸福など、経営理念に掲げていることは)
    木村家が当たり前にやっていることだと思っていると感じます。これからも大切にしていきたいと考えています。
  • ─ 美貴子さんが社長に就任されてから、社員の声を聞くための場も設けていると伺いました。
  • 月に一回、ディナー・ミーティングを始めました。木村家はそれほど従業員が多いわけではありませんが、製造、レストラン、販売、ホールなどで働く時間帯が違うこともあって、従業員のコミュニケーションが十分ではありませんでした。それで、様々な部門から従業員が集まって、食事をしながら本音で話したり、意見を出し合えるようにしました。木村家の事業にも参考になるパン屋さんやレストランを会場に選び、楽しみながらやっています。
  • ─ 美貴子さんはかつて「銀実会」の企画部で活躍もされていたそうですね。「銀座」への想いをお聞かせいただけますか?
  • 「銀実会」は「銀座の街を良くしていこう」という若手の集まりで、私は35歳の時に、OBの方からお誘いを受けて参加し始めました。企画部では、夏の「ゆかたで銀ぶら」や秋の「銀茶会」の運営などをしています。

    銀実会では諸先輩方から、昔の銀座の話や、どういう思いでお商売をしているのかを伺う機会も多いのですが、皆さん「仲間に恥ずかしくない商売をしなさい」と仰います。「安心安全が守られる街でありたい」という思いもあり、東京マラソンの時は、銀実会が参加して、街のご案内や、警備の協力をしています。銀座が良くなれば、それぞれのお商売が良くなると思いますし、銀座のブランドを大切に守っていきたいという思いを強く持っています。

    銀座木村家には「昔、祖父母に連れてこられた」といった思い出と共に訪れてくださるお客様が多くいらっしゃいます。「今でも懐かしい」と言っていただけることは、とてもありがたいことだなと思っています。
  • *1「五つの幸福」:お客様の幸福、パートナーの幸福、従業員の幸福、会社の幸福、自分自身の幸福
    *2「四大目標」:最高製品、最高サービス、最高能率、最高賃金
銀座木村家 代表取締役社長

木村 美貴子

1977年東京都生まれ。玉川女子短期大学卒業後、フランス留学などを経て、1999年に木村屋總本店に入社。企画、財務などを担当。2006年同社取締役、2012年に銀座木村家の代表取締役社長に就任、現職。
http://www.ginzakimuraya.jp
今井麻希子
ライター

今井麻希子

株式会社オルタナ
http://www.alterna.co.jp
外資系IT企業等に勤務の後、2010年に名古屋で開催された生物多様性条約締約国会議(COP10)にNGOの立場で参加したことを契機に、環境やソーシャルの分野に仕事の軸をシフト。生物多様性やダイバーシティをテーマに、インタビューや編集・執筆、教育プログラムの開発や対話型カウンセリング・セッションを手がける。

取材・文:今井麻希子 / 企画・編集:株式会社オルタナ

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