CSR・CSV

東京鳩居堂 銀座本店

Ginza×CSR・CSV Vol.40 東京鳩居堂 銀座本店

創業から350年超、伝統文化を次の世代へ

2021.03.01

「銀座×CSR・CSV」第40回で紹介させていただくのは東京鳩居堂銀座本店です。1663年に京都で中国から輸入した薬(漢方薬)を取り扱う「薬種商」として創業し、時代を経てお香や書道具を取りそろえるようになりました。1880年には銀座尾張町(現在の銀座四丁目交差点)に東京支店として出店し、1942年に東京鳩居堂を設立しました。日本の伝統文化を伝え続けています。銀座本店の経営企画部・梶野富夫さんに話を聞きました。

漢方薬から書道、時代を超えて期待に応える品揃え

  • ─ 創業から350年以上という長い歴史をお持ちですが、御社の成り立ちを教えてください。
  • 鳩居堂は1663年(寛文3年)に京都で創業しました。当時は薬(漢方薬)やその原料を取り扱う「薬種商」を営んでいました。1700年頃になると薬の原料からさまざまな香りがすることに目をつけ、「この材料を使って、よい香りがする『お香』を作れないか」と考えました。これが鳩居堂でお香を作り始めたきっかけとなりました。

    薬やお香の原料は、当時も今も日本国内では珍しいものばかりで、国内だけでは集められず、海を越えて海外、主に中国から輸入していました。当時の中国では、さまざまな文化や技術が生み出されており、中でも日本の文化に大きな影響を与えたのが「書道」です。

    1800年頃の日本でも、手紙や文章を書く際には、書道で使う筆と墨が欠かせない道具でした。当時の鳩居堂のお客様の中にも有名な学者や書道の先生が多くいたそうで、鳩居堂が中国とやり取りをしていることを知り、「書道の本場である中国から、お香の原料と一緒に、本格的な書道の道具を輸入してほしい」と頼まれるようになりました。

    多くのお客様から書道具の輸入を頼まれた鳩居堂は、お客様の要望を快く引き受け、お香以外にも、書道具や書道に使う紙、手紙を書くための便箋、はがき、筆記具などを取り扱い始めました。
書道具が並ぶ銀座本店

書道具が並ぶ銀座本店

  • ─ お客様の要望に応える姿勢や、当時から続く文化を守るという思いが、現在の銀座本店の理念にも通じているのですね。
  • 私たちは「日本の伝統文化を守り育てる」を企業理念としています。昔から伝わる日本人の生活、知識、しきたり、文化などを、商品を通じてより多くのお客様に広め、残していきたいと考えております。

    「日本の素晴らしい伝統産業の中で光る匠の技を伝え、本物の良さにこだわるお客様のご要望にお応えする」。その両者の橋渡しの役を担っていくことが、鳩居堂の使命だと考えています。そのために、私たちがお客様の要望を理解して的確なアドバイスをすることで、すべてのお客様に楽しくお買い物をしていただくことを目指しています。

「日本文化の良さ」を感じられる店づくり

  • ─ どのような方がお店に来られるのでしょうか。
  • 40歳代から80歳代の女性や、ご家族連れ、外国人のお客様が多いです。香道、書道の専門家もご来店されています。

    「お香に興味がある」「書道を始めてみたい」という初心者の方や、「手紙は苦手」「昔からのしきたりは難しくてよく分からない」という方、さらに専門家や先生方まで幅広い世代の方々に楽しんでお買い物をしていただき、「日本文化の良さ」を感じていただける商品をそろえています。
  • ─ 取り扱っている商品の中で、人気商品や、おすすめ商品はありますか。
  • お客様に人気があるのは、線香、のし袋、便箋などの冠婚葬祭関連の商品や、時期に応じて扇子、ひな人形、五月人形、干支商材などの季節商品です。ギフト需要も多く見受けられます。

    人気のある商品は「シルク刷りはがき(88円~)」です。インクを厚く盛って繊細なディテールを表現するシルク刷りの技法を使い、四季折々の草花や風物をモチーフとした絵柄をおよそ200種類販売しています。
季節に応じた鮮やかな便せんやはがきが並ぶ店内

季節に応じた鮮やかな便せんやはがきが並ぶ店内

鳩居堂の部屋焚き香「KYUKYODO INCENSE」550円~1760円

鳩居堂の部屋焚き香「KYUKYODO INCENSE」550円~1760円

  • また、独自ブランドの部屋焚き香も全50種類以上を取りそろえています。さまざまな花の香りや白檀などの香木の香りをご自宅で楽しむことができます。

地域の伝統文化支え、持続可能な社会を

  • ─ 伝統文化を継承していくことは、まさにサステナビリティ(持続可能性)そのものといえますね。
  • 伝統文化は、次世代に継承していくべき財産であり、地域の伝統文化を支える住民や民間企業が連携し、守り続け、活用を進めるという観点は、持続可能な社会づくりにも役立つと考えています。

    毎年、JAPAN TRADITIONAL CRAFTS WEEK (JTCW)に参加し、日本の伝統工芸品の紹介をしています。JTCWとは、年に1度の14日間、東京にある30店舗のライフスタイルショップで日本各地の伝統的工芸品を紹介し、「創り手」「売り手」「使い手」をつなぐ応援イベントです。

    2020年はコロナ禍で銀座にお越しになるお客様が少なくなる中、苦境を街の絆で乗り越える「銀座もの繋ぎプロジェクト」や、銀座で商いをする店舗が連携し、自宅で「銀座」を体感できる商品を詰め合わせ、オンラインショップで販売する「銀座玉手箱」に参加しています。銀座の店舗をより多くの方に知っていただくために発信を続けています。

    ※1922(大正11年)創業の老舗和菓子店「木挽町よしや」(中央区銀座3丁目)3代目の斉藤大地氏が2020年4月2日から展開しているプロジェクト。「木挽町よしや」から名物の「どら焼き」を銀座菊廼舎に、銀座菊廼舎の「冨貴寄」をイタリアンレストラン「ヴォメロ」に、と店の商品をリレー形式で贈り、各公式SNSで紹介することで、「助け合いの輪」を作ることを目指している。
  • ─ 東京の本店を銀座に構えていますが、銀座に対する思いをお聞かせください。
  • 銀座にお店を出したのは1880年です。京都で創業した時から、宮中とのかかわりも深く、多くの商品を納めていました。江戸時代が終わり、京都から東京への遷都にあわせて、引き続き宮中に商品を納めることができるように、皇居への一本道にある現在の銀座四丁目交差点(旧尾張町)にお店を出すことになりました。

    銀座は世界中から注目されている街です。ブランド店をはじめ、多くの老舗が立ち並ぶ、憧れの大人の街だと思います。おばあさんから、お母さんへ、そしてお子さんからお孫さんへと、鳩居堂には何世代にもわたってお店を愛してくださるお客様が大勢いらっしゃいます。鳩居堂はそうしたお客様に支えられ、銀座の発展とともに今日までこの場所で歴史を重ね、お店を続けられています。
株式会社東京鳩居堂 経営企画部

梶野 富夫

1985年 株式会社東京鳩居堂入社
銀座本店、各支店での販売業務を経て、2007年より経営企画部にて総務、経理全般を担当。現在は販促業務にも携わる。

取材・文・企画・編集:株式会社オルタナ(http://www.alterna.co.jp)

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