CSR・CSV

Lond

Ginza×CSR・CSV Vol.28 Lond

従業員の豊かさが、お客さんの幸せにつながる

2017.12.11

「銀座×CSR」第28回で紹介させていただくのは、2013年から銀座でヘアサロンを展開するLond(ロンド)です。Londは「従業員第一主義」を掲げ、美容業界の課題である労働環境の課題解決に取り組み、事業を拡大しています。今回は石田吉信・共同代表にお話を伺いました。

美容室として社会課題にどう取り組むか

  • ─ 美容室でCSRに取り組む企業は少ないと思います。CSRに取り組もうと考えたきっかけは何でしょうか。
  • Londは、専門学校時代にクラスメイトだった6人で立ち上げた会社です。学生時代から、6人で一緒にお店をやろうと話していて、28歳の時に銀座で第1号店の美容室をオープンしました。

    現在、銀座では美容室を3店舗とまつ毛エクステサロンを2店舗展開しています。そのほかに錦糸町で1店舗、10月にはジャカルタでも店を開きました。

    一つの目標を実現したことで、私自身が社会に貢献したいと考えるようになりました。もちろん美容室の仕事というのは、お客様に活力や自信を与えるという意味で、社会に貢献する仕事です。

    しかし世の中にはさまざまな社会問題があります。例えば、子どもの貧困については、生まれる場所は選べなくても、成長や成功する機会は子どもたちに平等にあるべきだと思います。美容室として、そうした社会問題に対して何かできないかと考えていたときにCSRやCSV(共通価値の創造)という概念を知りました。

    ボランティアやNPOを立ち上げるのではなく、企業として社会的課題の解決に取り組むことができると知りました。それから関係する本を色々と読んで、勉強しました。全く知らない世界で、調べていて楽しくなりました。それがCSRに取り組もうと思ったきっかけです。

    それに将来を見据えたとき、CSRに取り組むことは必要だと考えています。私たちは美容業界で年商1位になるという目標を持っています。リーディングカンパニーになる企業がCSRに取り組んでいれば、他の企業にもCSRが広がると思います。

    1社だけでは大きな変化を生むことはできませんから、業界でCSRが浸透することで社会に良い変化を生めるようになればと思っています。
Hair salon Lond 店内

Hair salon Lond 店内

従業員第一主義とは

  • ─ 具体的にどのようなことに取り組まれているのでしょうか。
  • まず毎月、店舗のある銀座と錦糸町で清掃活動をしています。働かせてもらっている街に感謝しようということで始めました。

    企業が大きくなってからCSRを始めるのではなく、今の約60人の規模でできることを少しずつやっていきたいと思っています。今後は、参加する企業や人の輪を広げていきたいです。

    それから雇用です。私たちは経営理念に「従業員第一主義」を掲げ、物質・精神的の両面で従業員を幸せにできるよう努めています。美容室は離職率の高い業界ですが、Londは5年目の現在、離職率ゼロなんです。

    創業時から社会保険を完備し、完全週休2日制をとっています。これまでに産休・育休をとった従業員は4人います。スタイリストの平均年齢は27歳で、平均給与は56万円です。従業員に良いお給料を出せるよう、経営努力をしています。
清掃活動の様子

清掃活動の様子

  • ─ どうして従業員第一主義を経営理念に掲げようと思ったのでしょうか。
  • この理念は、創業前から決めていました。働く従業員が豊かでなければ、お客様を幸せにすることはできないと思ったからです。

    辞めさせない経営をすることで、一人ひとりの美容師が最大限の人生を送り、最大限の生産性を美容師人生の中で築いていけるのだと思います。
  • ─ 企業としての理念についてはいかがでしょうか。
  • 企業理念は「Love for All(すべての人・もの・ことに愛を)」です。これはどれだけ規模が大きくなって業態が多様になってもぶれないものだと思い、決めました。

    社名Londの「L」はLoveの「L」という意味も込められています。由来は、音楽のロンド形式にあります。ロンド形式は、主題の旋律に対し、異なる旋律が定期的に繰り返される形式です。

    ロンド形式のように、私たちも事業を通して、お客様や従業員を含むステークホルダーの人生をより豊かに贅沢にしていきたいと思っているんです。

    本来、ロンド形式のロンドは「L」じゃなくて「R」から始まる「Rondo」なのですが、Love(愛)とLife(人生)、Luxe(贅沢)という意味を込めて、「Lond」という社名にしました。

つながりを広げ、美容業界でCSRの浸透を目指す

  • ─ これからの事業展開とCSR活動についてお聞かせください。
  • 実は、みんなで新しい企業フィロソフィーをつくっています。従業員にアンケートをとり、どんな会社であって欲しいか、どんな人に働いて欲しいのかについて聞きました。今年1年かけて「Londフィロソフィー」をつくり、来年から実践していきます。

    事業を広げていく中で、企業理念を含む企業のDNAをきちんと受け継いでもらいたいという思いからです。何か問題が起きたときなどに、みんなで決めた指針があると会社の進むべき方向を見失わずに済みます。

    現在は、月に1度の社員勉強会を通して、会社の成り立ちや経営理念や企業理念を伝えています。同時に、なぜ現在の高い給与形態が成り立つのかも説明して、一定の経営への参画ができるようにしています。自分で理解し、会社のことをお客様に話せるようになるとお客様にファンになってもらえますからね。

    CSRについては、プロボノ(専門知識を生かした社会貢献)をしやすい職業だと思いますので、美容技術を使って児童養護施設や福祉施設で暮らす人たちに喜びを感じてもらい、自信を持ってもらえるようなことができればと考えています。

    それから業界でCSRを広めるために、さらに横のつながりを広げていきたいですね。そうすることで、1社だけでは達成できないより大きな変化を生むことができますから。

    店舗数については、来年は名古屋などに4店舗を出す予定です。そしてタイミングをみて、ジャカルタに次ぐ海外での事業展開も考えていきたいと思っています。
  • ─ 最後に、創業の地である銀座への思いについてお聞かせください。
  • 銀座で創業した理由は、「素晴らしい技術、素晴らしいサービス、素晴らしい空間を驚きの価格で」という目指す美容室像を実現するのに銀座が適切だったからです。実は他にも候補地がありましたが、清潔さを考えるとこの場所でした。

    銀座は本当に良い場所です。店舗を拡大するにあたり、いつも銀座のようなところはないかなと考えます。でもそういう場所はなくて、銀座が一番です。
Lond 共同代表

石田 吉信

1985年生まれ。専門学校のクラスメイト6人と2013年8月、Lond銀座1号店をオープン。現在、銀座、錦糸町、ジャカルタでサロンを共同経営する。経営者、美容師のほかに写真家としても活動。全国各地で美容師のフォトシューティングセミナーを実施し、美容メーカーパンフレットやアパレルブランドの撮影等で活躍している。最近は、プロボノとして社会福祉協議会のイベントでカメラマンを務めている。
https://www.lond.jp/
今井麻希子
ライター

今井麻希子

株式会社オルタナ
http://www.alterna.co.jp
外資系IT企業等に勤務の後、2010年に名古屋で開催された生物多様性条約締約国会議(COP10)にNGOの立場で参加したことを契機に、環境やソーシャルの分野に仕事の軸をシフト。生物多様性やダイバーシティをテーマに、インタビューや編集・執筆、教育プログラムの開発や対話型カウンセリング・セッションを手がける。

取材・文:小松遥香 / 企画・編集:株式会社オルタナ

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