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黒川 光博×高嶋 ちさ子

GINZA CONNECTIVE VOL.72

黒川 光博×高嶋 ちさ子

2017.11.01

バイオリニストの高嶋ちさ子さんと、銀座人たちの対談シリーズ。高嶋さんにとって銀座は、仕事でもプライベートでも思い入れのある街。そんな高嶋さんがゲストの方に、銀座のあれこれをディープに聞いていただきます。今回のゲストは、室町時代後期から続く和菓子屋「虎屋」の17代当主で代表取締役社長、黒川光博さんです。

日本が誇る和菓子の老舗、五世紀に渡る虎屋の歴史

高嶋さん
虎屋さんは室町時代に創業されたということですが、創業当時から和菓子屋さんだったんですか?
黒川さん
そうです。創業した年は定かではないのですが、1500年代、室町時代後期に京都で創業し、以来ずっと和菓子屋を営んできました。
高嶋さん
ということは、創業してもう……。
黒川さん
500年近くです。
高嶋さん
すごいことですね! 東京に来られたのはいつでしょうか?
黒川さん
明治2年の東京遷都にともない、御所御用の菓子司として、京都の店はそのままに東京にも進出しました。明治12年に赤坂に店舗を構えまして、銀座の今の場所に店をオープンしたのは戦後になります。
高嶋さん
黒川さんが把握してらっしゃるなかで、最も歴史のある虎屋さんの和菓子はどれでしょうか?
黒川さん
1635年には、最も古い御用記録(ご注文控え)が残っています。1695年には、菓子の見本帳と言って、今でいうカタログのようなものが作られていました。今お召し上がりになられている葛製の菓子『常夏』は、1711年には干菓子として作られていたという記録が残っています。
高嶋さん
そうなんですか!? 和菓子作りには砂糖が必要だと思うんですが、当時はかなり高級品だったのではないですか?
黒川さん
そうですね、砂糖は奈良時代に鑑真和上が中国から伝えたという説がありますが、当時は貴重なもので、甘味料というより薬用という用途で使われていたそうです。甘味料としては、清少納言の『枕草子』にも登場する甘葛(あまづら)が広く使われていたようですが、貴重品には変わりなかったようです。ですから、この和菓子も姿形は同じでも、今と同じ甘さではないかもしれません。
赤坂店 大正14年正月店頭風景

大正14年正月店頭風景

季節の移ろいを感じさせてくれる和菓子の魅力

高嶋さん
和菓子の定義について教えていただけますか。
黒川さん
私の和菓子の定義は、植物性の材料で作られているものだと思っています。たとえば、この菓子ですと葛や小豆が使われています。一部の焼き菓子では、卵を使うものもありますが、基本的に和菓子には動物性の原材料は使いません。
高嶋さん
なるほど!確かにそうですね。他に和菓子ならではの特徴はありますか?
黒川さん
和菓子は季節感をいかに出すかというのも大切な要素です。今の季節ですと(インタビュー時は7月上旬)見た目にも涼やかな葛をつかった菓子は清涼感を与えてくれますし、菓子の名前もまた『常夏』と言って、季節にふさわしい名前がつけられています。
高嶋さん
そういえば、和菓子の名前って文学的な響きのものも多いですよね。
黒川さん
和菓子は、味覚、視覚、嗅覚、触覚はもちろん、聴覚でも味わっていただきたいんです。その要素として菓銘(菓子の名前)があると思っています。菓銘から受ける印象で味わいも変わってきます。この感覚は昔の人も同様で、『源氏物語』や『古今和歌集』の一節からとった菓銘もあり、大切に名付けられたものであったと考えられます。
高嶋さん
最近印象に残っている名前のお菓子はありますか?
黒川さん
『ゆるるか』です。『源氏物語』にも見られる言葉で、ゆるやか、穏やかという意味です。噛む力・飲み込む力が弱くなったご高齢の方にもお召し上がりいただきやすい硬さの羊羹なのですが、この菓子を囲んで、ゆったりとした豊かな時間をお過ごしいただきたいという想いを込めて、菓銘がつけられました。
ゆるるか

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