GINZA CONNECTIVE (高嶋ちさ子対談シリーズ)

南條 勲夫×高嶋 ちさ子

GINZA CONNECTIVE VOL.56

南條 勲夫×高嶋 ちさ子

2016.07.01

バイオリニストの高嶋ちさ子さんと、銀座人たちの対談シリーズ。高嶋さんにとって銀座は、仕事でもプライベートでも思い入れのある街。そんな高嶋さんがゲストの方に、銀座のあれこれをディープに聞いていただきます。今回のゲストは著名人も足繁く通う日本料理店、「銀座三亀」の三代目店主、南條勲夫さんです。

著名人に愛される銀座の老舗日本料理店

高嶋さん
創業はいつですか?
南條さん
昭和22年(1947年)創業なので、今年で69年目になりますね。
高嶋さん
じゃあ、長く通われているお客さんも多いんですか?
南條さん
ありがたいことに、3代続けて来ていただいている方もいらっしゃいますね。
高嶋さん
三亀の由来は?
南條さん
先々代がつけたんですよ。縁起の良い鶴亀の〝亀〟に、三菱とか三井にちなんで、〝三〟をつけたみたいです。深い意味はなさそうなので、三亀じゃなく、三鶴でもよかったかもしれないですね。
高嶋さん
なるほど(笑)。店内にはいろいろと亀にまつわる置き物がありますね。
南條さん
お客さんが持ってきて下さるんですよ。これなんかね、彫刻家の北村西望先生のお弟子さんから頂いたものなんですよ。
高嶋さん
それは粗末にできませんね。壁にかかっているこの画は?
南條さん
うちによく来て下さっている村松秀太郎先生の原画でね、渡辺淳一先生の小説『失楽園』の挿絵なんです。渡辺先生もよく来て下さいましたね。
高嶋さん
作家の先生はよくいらっしゃるんですか?
南條さん
ええ。言える範囲ですと、伊集院静さん。とても優しい方ですね。
銀座三亀 店内

銀座三亀 店内

小説『失楽園』の挿絵原画

小説『失楽園』の挿絵原画

モットーは旬の素材を大切に、お客様に真摯に向き合うこと

高嶋さん
南条さんは、お店に立つようになってどのくらいですか?
南條さん
60年くらいですかね。コツコツとやってきましたよ。でも、親父さん(=先代)にはよく怒鳴られていましたね(苦笑)。
高嶋さん
先代から受け継いでいる教えはありますか?
南條さん
「お客様を騙すな、納得できないものは捨てても売るな」ということですね。この前行ったある店で、「大間のマグロでございます」って言って出てきたマグロが凍ってるの(苦笑)。そんなもの、大間のマグロじゃないですよね。お客さんに嘘をついちゃいけませんよ。
高嶋さん
なるほど(笑)。お料理や食材へのこだわりは?
南條さん
旬のものを使うということですね。我々の商売は、素材が九割だと思いますね。それをいかに美味しくするかは料理人の腕ですが、やはり素材ありきです。より良い素材を見つけることを心がけています。
高嶋さん
素材はご自身の目で見て仕入れているんですか?
南條さん
そういう風に言うと聞こえはいいんですが、私自身は素材に関しては素人でしょ。魚屋さんのプロにまかせています。
高嶋さん
なるほど〜。
南條さん
プロはね、まぐろ一切れ見れば、産地もわかるんですよ。
高嶋さん
え、すごい!!
南條さん
そういうもんなんですよ。だから素材選びは、その道の専門家にまかせるのが一番ですよ。
高嶋さん
お客さんには、お料理のどこを見てほしいですか?
南條さん
ご自分の舌で評価して下さいということでしょうか。たとえば、うちではマグロの刺身は本マグロを使っていますが、そんなことは当たり前なんですよ。それをわざわざ、どこそこの産地で、なんとかかんとかと店側がウンチクを語るのがイヤなんですよ。でも、お客さんって、こだわる人もいるでしょ。そうじゃなくて、自分の舌で評価して下さいと思いますね。
高嶋さん
でも言いたがるお店って多いですよね。
南條さん
それは舞台裏の話であって、聞かれてもないのに語らなくてもいいと思うんですよね。

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