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Hello! RADIO CITY:!AMAZING GINZA!No.25「街並みのデザイン」から「街づくりのデザイン」へー銀座デザインルール第3版発行

「銀座は人が基本の街」と語る小林博人さんは、銀座街づくり会議発足時からアドバイザーとして銀座に関わってきました。この16年間、銀座という商業地の変遷を見てきた小林さんが考える銀座の本質、そしてこれからの銀座の街の姿とはどのようなものでしょうか。この2月に銀座街づくり会議・銀座デザイン協議会が発行した「銀座デザインルール」第3版も紹介します。

番組名:Hello! RADIO CITY(中央エフエム 84.0MHz)
放送日時:2021年2月4日(木)12:05~12:20
ナビゲーター:JUMI
出演者:小林博人(銀座街づくり会議・銀座デザイン協議会アドバイザー、建築家、慶應義塾大学大学院教授)

憧れと親しみが共生する街、銀座を見つめて

JUMI
今日のAMAZINGなゲストの方をご紹介しましょう。銀座街づくり会議・銀座デザイン協議会のアドバイザー、そして建築家であり、慶應義塾大学教授でいらっしゃる小林博人先生とお電話を繋いでいます。小林さん、どうぞよろしくお願いいたします。
小林
よろしくお願いいたします。
JUMI
今、お役をご紹介しましたが、本当に多才でいらっしゃいますね。日頃のお仕事や個人的な銀座との関わりを教えていただけますか?
小林
私はもともと建築を設計しておりまして、自分の事務所で建築と街の風景デザイン、それから街づくりのアドバイザーや人と空間のデザインに関係することに携わっています。銀座との関わりは、2004年に銀座街づくり会議が発足したときに誘っていただいてからになります。私自身は、銀座には小さいころから「憧れの街」というメージがあります。それから小さいころに母に連れられてギャラリーに行った思い出があります。母もアーティストで、銀座で個展を開いたこともあります。銀座には非常は近しい気持と、一方で憧れを感じています。
JUMI
2004年から銀座街づくり会議に関わられるなかで、銀座の街をどのように捉えてらっしゃいますか?
小林
最初は近寄りがたい存在だと思っていました。でも地元の方とお話をするなかで、本当に地元の方が銀座を愛していて、その方々のネットワークとコミュニティがすごく密であることを知りました。ですからやっぱりこの街は人がつくっているんだなと思いました。人のネットワークで街ができていることを今でも痛切に感じます。
JUMI
本当に銀座愛で繋がっている方たちばかりですものね。
小林
本当にそうですね。地元の方だけでなくてお客様も銀座を愛してらっしゃると思います。

粋な銀座のためには、野暮なことでも

JUMI
この2月に「銀座デザインルール」第3版が発行されるということですが、そもそもなぜデザインルールが必要なのかを教えていただけますか?
小林
20世紀初めに日本初の商工会ができて、それが銀座通連合会のもとになって今の銀座街づくりに引き継がれているんですね。銀座はもともと街の方が集まって、話し合って街のことを決めるという長い歴史があります。「銀座デザインルール」という冊子を発行して読んでもらうのは、銀座の方からするとあまり粋じゃないと思われるんですね。「そんなこと言わなくてもわかってるでしょ。わざわざ口に出して言うのは野暮だよ」という紳士協定が本来の銀座らしさだと思われているんですね。
JUMI
それは!空気を読んだり阿吽の呼吸で「銀座の粋、心意気をわかってね」ということですね。
小林
そうですね。私はそれが本来の銀座だし、銀座の魅力であり強さだと思うんです。銀座に来たら暗黙の了解でルールを守っているのが望ましい街の姿です。一方、グローバル化でいろんな国の方もいらっしゃるし、世代も広がっています。それから社会の変化がものすごく速くなっている。こういう状況で「私たちが今ここで大切にしている思いはこれなんだよ」ということを明言化して共有する。そういうこともだんだん必要になってきて、2008年に最初のデザインルールを作りました。ちゃんとコンセプトを伝えられるように、野暮を承知で発行することになりました。

創造性を引き出す、決めないルール

JUMI
「銀座デザインルール」第1版が発行されたときに、街の方の反応はいかがでしたか。
小林
街の方々が考えていることを、「街並み景観のためのルール」という1つのコンセプトにまとめて、私たち専門家が言葉にしました。いろいろな考えが整理されてクリアになったと思ってくださっていると思います。ただルールと言っても、ものごとを数値化して「これはこの数値以下にしなきゃだめだ」とか、「この色より濃い赤はダメだ」みたいなことはできるだけ言わないようにしようと決めています。今回の第3版でもそういうことは書いていません。
JUMI
幅もあって、自由度もあるのですね。
小林
そうでないとクリエイティビティは生まれてこないんです。銀座の人がもっとも大切にしているのは、古いものにしがみつくのではなく、「一番新しいものを最初に取り入れるんだ」という革新的な心なんですね。私はそこが大好きで、ルール化したとしてもその心意気みたいなものを決して削がないようにしなくてはなりません。だからできるだけフレキシビリティを担保することが大事だし、それを目指しています。

「デザインルール」を俯瞰して、捉え直す

JUMI
第1版、第2版に続いて10年ぶりに第3版が発行されるということですが、10年ひと昔と言いますが、思った以上にこの10年の変化はとても大きかったと思います。第3版にはどんなことが書かれているんでしょうか。
小林
もともと第1版を発行するときに、できるだけ早いピッチで更新していこうと考えていました。書かれたことが金科玉条になって、「なんでこれを書いたんだっけ?」とわからなくなるのが一番良くない。ですからどんどん刷新していこうというコンセプトで始めて、第2版を2011年に発行しました。良いペースだなと思っていましたが、社会の変化がどんどん速くなり、銀座の街づくりとして取り組まなくてはならないことが広がってきました。それでもみんなで話し合って、2015年に「追補別冊」を発行しました。ここではたくさん集まったデザイン協議の事例写真を載せながら、言葉ではなく実際に写真を見せて、私たちが判断してきたことを事業主の方々に理解していただくという方法を取りました。そして近年、それに加えて交通の問題など、もっと大きいものごとが銀座にも出てきて、街づくりの課題をあらためて広い視野で「街づくりのデザイン」として考えていくことが大事だろうということになった。もともとは街づくりの景観という意味での銀座ルールを考えてきましたが、今回の第3版の大きな目的として、街並みのデザインを超えた街づくりそのもののデザインをもう一回見直そうということを考えました。
JUMI
かなり広い視野に立って考えられたということですね。第3版はどこで入手できますか。
小林
銀座街づくり会議の事務局やWEBサイトからご購入いただけますし、いろいろなところで読んでいただけるようにしたいと思っています。
JUMI
小林さんがおっしゃるように、街は人で作られていて、そこに主役となる人がいなくてはいけないし、そのなかでみんなが阿吽の呼吸でルールをちゃんと知っていることがとても大事なことだと思うんです。

対話がつくりだす力を、今こそ弱めてはいけない

JUMI
小林さんは今後の銀座にどんな期待や希望をお持ちなのでしょうか。
小林
銀座はもともと人と人とが直接会って、話し合いながらものごとを決めていく街です。これが銀座のご商売の原点だと思うんですよね。お客様と店主がいて、1対1の商売をする。その対話が街づくりそのものです。これからも銀座の街づくりの基本は、人と人とがつくるものであってほしいと思います。企業や大きなブランドが銀座に入ってくることもそれはそれでとても大切なことだけれども、やっぱりそこにいる人、街に来るお客様との対話で成り立っていく街であってほしいと思いますね。
JUMI
そうですね。人と人との対話がつくる街であることをこのコロナ禍でより一層感じましたね。
小林
まったくその通りで、私たちはあまりにもそれが普通だと思っていたんですよね。「あそこに行けばあの人に会える」と思っていたらそれが許されない時代が来た。しかもこんなに突然、こういう形で来るとは銀座だけではなく世界中の街で想定していなかったことで、みんながどうしたら良いのか不安に思っているはずです。感染症予防をしながらでも、決して人と人とのつながりを弱めてはいけないと思うんですね。銀座は人のつながりがベースにある街なので、この街から今後の街のあり方、あるべき姿を発信できると良いなと思います。街の方も人のつながりが商売の基本だと思っているはずなので、ぜひ銀座に足を運んでいただけると銀座の商売への心意気が伝わるんじゃないかなと思います。
JUMI
本当にそう思います。今日は本当に貴重なお話を伺いました、銀座街づくり会議・銀座デザイン協議会のアドバイザーであり建築家、慶應義塾大学教授小林博人さんにお話を伺いました。小林さん、本当に今日はありがとうございました。
小林
こちらこそありがとうございました。
「銀座デザインルール」第3版の詳細はこちらからご覧いただけます。

出演者プロフィール

JUMI

2010年から中央エフエムにてナビゲーター、プロデューサーとして番組制作等に携わる。
知れば知るほど奥深く、沢山の「宝物」を有する中央区の魅力を「ヒト・モノ・コト・オト」を軸として、多くのリスナーの方々にラジオを通してお伝えしたいと活動する日々。
街と人と橋と地下鉄をこよなく愛しています。

小林博人

建築家、小林・槇デザインワークショップ(KMDW)主宰、慶應義塾大学大学院教授、銀座街づくり会議アドバイザー。
京都大学、ハーバード大学大学院デザインスクール(GSD)で、建築設計・都市デザインを学び、日建設計、ノーマン・フォスター事務所で設計の実務を行う。2003年日本の伝統的なコミュニティである「町」に関する研究でGSDからデザイン学博士号取得。
https://www.kmdw.com/

協力:中央エフエム株式会社(http://fm840.jp/

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